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北朝鮮・金正恩総書記「死亡」「重篤」怪情報が流れる裏

北朝鮮・金正恩総書記「死亡」「重篤」怪情報が流れる裏 
北朝鮮・怪情報が流れる裏(画像)Jiri Flogel / shutterstock

北朝鮮の国営『朝鮮中央通信』によると金正恩総書記は7月8日午前0時、首都・平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝し、かねてから囁かれていた「健康異常説」を一蹴した。

同日は祖父である金日成主席の27回忌に当たり、この太陽宮殿には〝ミイラ化〟された日成氏と父・金正日総書記の遺体が、永久保存されている。

実は、韓国では前日にも正恩氏の健康異常説が流れており、韓国の情報機関『国家情報院』が躍起になって否定していた。

「7月7日の早朝、韓国では証券業界などを中心に、《米CNNが緊急で打電。金正恩氏が元山から平壌の専門病院に移送されたことを確認》《脳出血で意識不明の状態が10日間続き、事実上回復は不可能》《フランスの医療チームが手術を行ったが死亡》《平壌に戒厳令》などの情報が錯綜。株の売買に関するネット掲示板には、《今からでも株を整理すべきか》などの質問が相次ぎました」(大手紙韓国特派員)

しかし、こういった正恩氏の死亡説、重篤説が拡散する事態は、韓国ではよくあることで、日成氏、正日氏の時代にも同様のフェイクニュースがまことしやかに流布していた。

「直近で正恩氏の激やせ報道が流れ、さらに、正恩氏の怒りを買った軍の最高幹部が更迭されたことで、北朝鮮が政情不安に陥っていると連想するのは、ある意味、当然なことです。それを利用する輩が現れても不思議ではありません。北朝鮮をめぐる情勢がめまぐるしく変化する中、空売りなどで一儲けを企む韓国の仕手筋が、折を見て正恩氏の健康異常説を流しているのです」(同)

韓国では、しばしば「政治テーマ株」が株式市場を騒がせており、時の政治家の政策によって、その地縁、血縁、出身校などに関連する株価が変動する。

来年3月の韓国大統領選挙をめぐるテーマ株も、この春ごろから動き出しており、左派有力候補の李在明京畿道知事や右派有力候補の尹錫悦前検事総長に関連する株価は、いずれも暴騰している。

三代にわたる世襲独裁で制度疲労…

ところで、太陽宮殿参拝時の集合写真を見ると、6月末の朝鮮労働党政治局拡大会議で「党の決定と国家的な重要課題の遂行を怠った」と批判され、党指導部の中枢である政治局常務委員から降格したと報じられた李炳哲中央軍事委員会副委員長と、政治局員の朴正天総参謀長が、他の党や軍の幹部と共に随行していた。

「整列した際の立ち位置は現在の序列を表していますが、李氏は2ランク下の政治局員候補に降格されたと思われます」(北朝鮮ウオッチャー)

また、李氏に連座したとみられた朴氏は、政治局員から降格されておらず、総参謀長のポストもそのまま維持されているようだ。

「ただし、軍の階級は元帥から次帥に下げられており、いずれも大将の軍総政治局長や社会安全相、国家保衛相より、立ち位置が下位という〝ねじれ現象〟が起きている。次帥が大将よりも序列下とは、なんとも不自然です」(同)

李氏と朴氏の2人は失政続きの正恩氏の身代わりとなり、すべての役職、肩書を剥奪され、粛清された可能性も指摘されていたが、一応は健在が確認された。しかし、党序列11位で保健部門を担当している崔相建政治局員(党書記兼科学教育部長)の姿は見られず、新型コロナウイルスの感染拡大により、粛清された可能性は否定できない。

「正恩氏はコロナ禍や食糧不足について、反省の弁を述べるとともに『自力更生』や『苦難の行軍』という言葉を多用し、幹部や国民を鼓舞しているが、いまだ抜本的な解決方法を見いだせていません。側近に罪をなすりつける行為を繰り返し、幹部たちの面従腹背が恒常化すれば、体制にとって大きなリスクになります。三代にわたる世襲独裁が75年以上も続けば、あちこちに『制度疲労』が起きるのは当然。正恩氏に改善できる力がない以上、国際社会は北朝鮮に民主化を促す圧力を加え続けるべきです」(国際ジャーナリスト)

実は“操り人形”の衝撃情報

6月22日、平壌で計8年間を過ごした元駐北朝鮮ドイツ大使のトマス・シェファー氏が、『RFA』(自由アジア放送)のインタビューに応じ、その内容が日韓で物議を醸している。

同氏は「正日氏も軍などに気を遣っていたが、正恩氏の権力は父親よりもはるかに弱い」と語り、実情は「エリート層との共生関係にある名目上の独裁者」であると指摘。つまり、党と軍部による〝操り人形説〟を唱えたのである。

また、三代世襲の後は強硬派と穏健派の間で常に権力闘争が展開されており、正恩氏の政策に自主性や一貫性がないのも、そもそもの実権がないからだという。

「党機関紙の『労働新聞』は7月10日、革命的な修養と党思想の教育をさらに強化しようという論説の中で、『90年代に成長した世代が、現在、活動家の主力として登場しているが、彼らは、搾取と圧迫、亡国の悲しみや戦火をくぐり抜けておらず、焼け野原の上ですべてを新たに起こさなければならなかった苦難も経験していない』と、その軟弱ぶりを非難しました」(同)

今年4月、正恩氏も「若者の服装とヘアスタイル、言動、人々との関係についても常に教え、統制が必要だ」と若い世代を諭していたが、韓国の文化に慣れた北朝鮮の『MZ世代』(10~30代)は、その批判は正恩氏にこそ当てはまると鼻で笑っているという。

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