(画像) Mix and Match Studio / shutterstock
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「葬儀社」と「警察」の癒着…札束が乱れ飛ぶ“遺体獲得戦争”の舞台裏

かねてから囁かれてきた「警察と葬儀業者の癒着」が、ついに明るみになった。


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神奈川県警の現職刑事が、知り合いの葬儀会社に便宜を図る見返りにワイロを受け取ったとして逮捕されたのだ。


10月21日、受託収賄の容疑で神奈川県警に逮捕されたのは、同県警大和署刑事一課の警部補・加藤聖容疑者(48)。また、贈賄容疑で葬儀会社「林間葬祭」を経営する河合恵子容疑者(60)と、夫で宮前署警部補・河合博貴容疑者(65)も逮捕した。


「変死や事故死などによる遺体の身元や死因の特定のために行う検視作業で、大和署へ遺体を搬送する際、『遺族に林間葬祭を優先的に紹介してほしい』と河合容疑者夫妻から依頼された加藤容疑者は、これを引き受ける見返りに金品を受け取っていたのです。現在、分かっているだけでも、2019年3月から20年1月の間に、計13回にわたって夫妻から現金127万円とプリペイドカード137枚(販売価格68万5000円相当)を受け取った疑いが持たれています」(社会部記者)


加藤容疑者と博貴容疑者は、かつて県警内の同じ部署に所属していた先輩後輩の間柄だった。こうした関係から、金品の見返りに恵子容疑者が経営する「林間葬祭」を優遇して遺体搬送の仕事を発注していたとみられている。


他県の葬儀業者が言う。


「警察の遺体搬送車両には限りがあるため、ストレッチャーが入る自前の遺体搬送車を持っている葬儀会社に仕事がくるケースも多い。変死体を警察署に運んだり、検視作業が済んだ後に安置所や葬儀場に搬送するという仕事です。この搬送代は数万円程度ですが、遺族と話す機会があるので、その後の葬式を受注する取っ掛かりになる。業者としては、おいしい仕事なんです」


警察が扱う遺体は突然死が多く、遺族も気が動転している状況で葬儀会社を探して選択する余裕はなく、この時に搬送した業者をそのまま選ぶケースが多いという。


警視庁の現職刑事は、こうした場合の葬儀社の選択に、どうしても偏りが出ると証言する。


「中規模ぐらいの警察署でも年間に400~500人ぐらいの変死事案がある。警察が取り扱う遺体だから、列車への飛び込み自殺だったり、孤独死で腐乱状態になっていたりと凄惨なホトケさんが多い。しかも、通報は24時間入る。こっちとしては、事件性がない遺体はさっさと遺族の元へと引き渡したいので、呼んだらいつでもスピーディーに駆けつけて来てくれて、ドロドロに腐敗したようなやっかいな変死体でも対応してくれる〝頼みやすい葬儀屋〟に優先的に仕事を振るという傾向はある」


ただ、警察署内には地元の複数の葬儀社が出入りしており、建前上は「公平に仕事を分配する」ことになっているそうだ。


「でも、実際にはどう割り振っているかなんて、業者たちには分かりっこない。それで、今回のようにカネで業者とズブズブの関係になるケースも発生するわけだ」(同)

過剰接待代わりにビール券

中部地方の警察OBが、癒着の実態を明かす。

「葬儀屋と警察の癒着は大昔から続いていたことだよ。オレらの時代は慰安旅行に業者がついてきて、高い酒を注いでくれたり、最後までヤレるコンパニオンの手配までしてくれたもんだ。翌日も釣り船なんかチャーターして竿まで用意してくれてね。まさに至れり尽くせり。向こうとすれば、オレたちに気に入られれば、1回当たり数百万円の葬式の仕事がどんどん入ってくるわけだから、カネに糸目はつけないってわけだ」


とはいえ、時代の流れとともに社会の目も厳しくなり、こうした過剰接待は20年ほど前から組織内で縛りがきつくなったという。


「代替となっているのがビール券のバラマキだ。幹部の机には100枚単位で束のように入ってるよ。特に業者のターゲットになるのが所轄の係長クラス。変死現場に入って、業者に『ホトケを持ってってくれ』って直接連絡するからさ。今回、パクられたのも警部補だろ? ちょうど、この役回りになる階級だよ」(同)


警察官は、街で酒を飲んで他の酔客とトラブルになることを避けるため、警察署の食堂などで飲むことも多いという。


「そういう時にビール券があると助かるんだよな。歓送迎会はもちろん、捜査本部が立つような大きいヤマのホシを挙げた時とか、県警内の柔道大会で優勝しただとか、なにかにつけて宴会を開くからな。そういう飲み会の〝原資〟が、葬儀屋が持ってきたビール券だというのは、署員はみんな知ってるよ」(同)


それほどズブズブな警察と葬儀社の関係が、今回はなぜ立件されたのか。前出の警視庁刑事は、こう推測する。


「新型コロナが流行して、大勢で集まることができなくなっちゃったでしょう。葬儀屋はデカい葬儀が打てず、経営が厳しくなっている。こういう場合、カネに詰まって両者が揉めだして、結果的に監察にチクリが入って発覚するっていうのがよくあるケースだね」

病院長に5000万の現金

激しい〝遺体獲得戦争〟でカネが乱れ飛ぶのは警察だけではないという。

東京都内で50年近くにわたって葬儀会社を営んできた中村和男さんが実名で告発する。


「警察もひどいけど、病院との癒着もすごかった。ある病院が、末期がん患者などに施す〝終末期医療の緩和ケア病棟〟を開くと聞き、そこの患者を優先的に紹介してくれと院長に働きかけた。業務提携みたいなもんさ。こういう試みは、日本で初めてだったと思う。なんとか実現させるために、病院長に5000万円を現金で包んで渡したからね」


中村さんによれば、これほど莫大な初期投資をしたにもかかわらず、それ以降も関係を維持するために院長宅の家政婦5人の月給計150万円を、しばらく負担し続けたそうだ。


「院長の子どもの学校やスポーツクラブへの送り迎えもウチの葬儀会社の従業員が行い、ガソリンカードを提供し、院長の家族が使用するベンツのリース代も払ったよ。看護部長の駐車場代まで面倒をみてたね」(中村さん)


その分、見返りも大きかった。この病院で亡くなった患者の葬儀の売り上げだけで、最初の1年間が4500万円、翌年は7000万円を超えたというのだ。


「一般的な総合病院では、死亡患者は月に数人程度。しかも3カ月で転院していくので、事前にお客さんをつかむことは難しい。でも、緩和ケア病棟なら1日に7人という日もあったし、転院することもないしね。緩和ケア病棟に入るほどの患者さんだから、家族も覚悟を決めていることが多い。時間をかけて葬儀に向けた話し合いができることも、受注率アップにつながった。病院も、ウチの会社をいいように紹介してくれるので、問い合わせから受注につながる確率は4割を超えた。通常は1割がいいところで、これは破格の数字だよ」(中村さん)


〝提携関係〟にあったので、院長や医師、看護師の方からも「この患者さん、お金持っているよ」と耳打ちされることもあったという。


「裕福な家には、遠慮なく300万円近い葬儀プランを勧められる。喪主をやるのは両親の時だけで、人生に一度か二度。だから、相場をよく理解していない人が多いし、あの世へと送り出すのにあまりケチケチしたくないという心理も働くからね。逆に、カネのない家には30万円からの安いプランを紹介し、着実に仕事にしてきた」(中村さん)


最近は、インターネットで相場を調べたり、格安プランの葬儀なども人気だが、中村さんは次のように指摘する。


「インターネットには葬儀会社のホームページがいくつもあるけれど、1人で7~8社もやっていることがある。要は、少しでも多くの会社を出して、お客さんの目にとまって電話が欲しいということだ。葬儀業界は監督官庁がないし、資格がいるわけでもないので、新規参入が多くて競争が激しい。警察や病院が業者を紹介するには、必ず理由があるもんなんだよ」


なりふり構わぬ〝実弾攻撃〟が横行する葬儀業界。まさに「地獄の沙汰も金次第」というわけか。