(画像) tugralenes / shutterstock
(画像) tugralenes / shutterstock

北朝鮮・金正恩総書記が妹・与正氏に服従!? 「恐怖政治」禅譲の最新情報!

米国のタブロイド紙『グローブ』は最近、北朝鮮の金正恩総書記が《5月6日から6月5日の間に、秘密クーデターを起こした金与正党副部長により殺害された》と報じた。


【関連】北朝鮮・金正恩総書記が恐れる韓国との「新型ミサイル」軍備競争 ほか

同紙は《6月以降、正恩氏は公式の席上に姿を見せていないが、9月9日の北朝鮮政権樹立記念日の式典に突然として登場した。ただ、このときは影武者だった》とも伝えている。


この報道に韓国の各紙は《正恩氏が姿を消せば死亡、現せば影武者》と意に介していない。しかし、与正氏がクーデターの主犯格と見なされたことは、一般的な米国人が、与正氏を兄の正恩氏に次ぐ北朝鮮の「権力者」として認識し始めたことを示しており、なかなか興味深い。


「韓国の情報機関『国家情報院』が10月28日、国会情報委員会による国政監査を公表し、その中で正恩氏が、朝鮮労働党の会議場に飾られていた祖父の金日成主席と父の金正日総書記の写真を撤去し、『金正恩主義』という用語を党内で使用するなど、独自の思想体系の確立を始めたと明言しました」(北朝鮮に詳しい元大学教授)


もう1つ注目されるのが、10月10日の『党創建76周年記念講演会』の際、正恩氏による全党、全軍、全国民を対象にした演説の中で、北朝鮮独自の「党中央」という表現が、23回も登場したことだ。それが何を意味するのか。


「演説内容を細かく分析すると、明らかに『党中央』の策定作業を行ったことが分かります。一部には『党中央』を正恩氏、もしくは党中央委員会を象徴する表現とする見方がありますが、おそらく『党中央』とは、正恩氏の筆頭代理人を指していると思われます」(同)

周囲の側近たちを信じることができない…

9月27日に開催された最高人民会議で、北朝鮮国家権力の最高指導機関である国務委員会(委員長は正恩氏)のメンバーが再編され、1年前に任命された正恩氏の側近10人中7人が追い出され、与正氏を含む7人が新しく任命された。

過酷な首のすげ替えが行われる中、いまだに命脈を保ち続けているのは、金英哲党中央委員会書記局書記(対南担当)、李善権外相、鄭京擇国家保衛相の3人だけしかいない。


また、第1書記への就任が噂された趙甬元氏、呉秀容党経済担当書記、金成男党国際部長、朴正天軍総参謀長、李永吉国防相、張正男社会安全相が、与正派を結成したという話もある。


「金正恩体制が10年を超え、その権力体系は安定したように見えますが、周囲の側近たちを信じることができず、頻繁に席を与えては奪うということを繰り返している。この期に及んでも正恩氏が権力維持に腐心していることは、想定以上に体制が不安定であることの証明でもあります」(国際ジャーナリスト)


つい5年前まで、趙甬元氏はさして重要な人物ではなく、正恩氏、与正氏兄妹の執事のような立場にすぎなかった。ところが今日では、党幹部の中でも唯一、正恩氏と同じような格好をして、正恩氏の前でも平然とタバコを吹かしている。


しかも、趙氏は正恩氏の代理人として、党の役職者を批判することもある。これらの行為は、与正氏がバックに控えているからできることなのだ。


かつて〝ミサイル元帥〟と称えられた李炳鉄氏も、正恩氏の前でタバコを吹かしたのは趙氏と同じだが、結局は国務委員をクビになっている。与正氏に嫌われたら、正恩氏にいくら寵愛されようが意味をなさない。

与正氏の命令で秘密警察幹部ら8人を処刑!

与正氏が対米、対南事業を統括するのは、もはや既成事実と化しており、金英哲対南担当、李善権外相も彼女に従属せざるを得ない。与正氏は昨年6月、韓国と合同で運営していた南北共同連絡事務所を爆破して以来、強面のイメージを強めている。

昨年11月13日、秘密警察である国家保衛省で電波探知を担当する局長と幹部ら8人が、平壌市郊外にある同省所有の運動場で処刑された。最終的に命令を下したのは、ほかでもない与正氏で、情状酌量の余地はなかったという。


「この事件以外にも、与正氏の命令で有力者が解任されたとの情報が複数伝わっています。驚くべきは国務委員として、3回の米朝会談で正恩氏に寄り添い、国務委員会の紅一点だった崔善姫外務省第一外務次官を追い出したことです。彼女はセックススキャンダルや不明資金50万ドルの出どころなどを追及され、現在は哀れ政治犯収容所入りです」(北朝鮮ウオッチャー)


崔氏は、正恩氏の抜擢人事で浮上した寵愛者の1人で、米朝交渉のキーマンとされていた人物。そんな彼女を収容所送りにしたということは、正恩氏が与正氏に屈したことを意味する。まさに与正氏は「金正恩主義」を演出して、操る「党中央」に君臨しているのだ。近い将来、与正氏の立ち位置は、北朝鮮の歴史上で類を見ないものになるかもしれない。


米国の立場からすれば、無駄に時間がたつほど北朝鮮の軍事的な脅威は増大する。そのため、この先にタイミングを計って米朝間の協議が再開されるとみられるが、現在のバイデン政権のスタンスからすると交渉は難航した末、おそらく暗礁に乗り上げるだろう。


自らの権力を与正氏に分け与えているような正恩氏の行動が、北朝鮮の将来に果たして利益をもたらすかどうかは未知数だ。