東京証券取引所は6月30日、音響機器メーカーの名門『オンキヨーホームエンターテイメント』を8月1日付で上場廃止にすると発表した。
オンキヨーは1946年に、旧松下電器産業(現パナソニック)のスピーカー部門の工場長だった五代武氏が、『大阪電気音響社』として創業。音にこだわった製品を次々と生み出し、日本を代表するオーディオメーカーに成長した。
「80年代にはパイオニア、ケンウッド(旧社名・トリオ)、山水電気などと共に、ミニコンポを流行させた。オンキヨーは当時、人気絶頂だったアイドルの南野陽子をCMに起用し、若い世代を惹きつけました」(広告代理店関係者)
ところが、2001年に米アップル社の携帯型デジタル音楽プレーヤー『iPod』が発売され、パソコンを使ってインターネットから音楽を入手し、持ち運ぶ時代が到来した。
主力のインド工場がコロナ禍で操業ダウン
「07年に『iPhone』が発売されると音楽はスマホの中に取り込まれ、デジタル化が急加速。スマホの音質が向上するに従い、オーディオ市場は衰退の一途をたどりました」(同)
その結果、オーディオ各社は次々に消滅。残るオンキヨーはパイオニアのAV事業を買収して生き残りを図る一方、家庭向けのアンプやスピーカーの製造から撤退し、車載向けスピーカーなどのOEM(相手先ブランドによる生産)で再建を進めていた。
「マスク越しの会話が増えたことで、高齢者が聞きやすい補聴器や集音器の製造に力を入れたところ、20年の売り上げは堅調でした。ところが、OEMで主力のインド工場がコロナ禍で操業ダウンに追い込まれてしまったんです」(経済ジャーナリスト)
オンキヨーは経営不振に陥り、祖業である家庭向けAV事業を『シャープ』と米音響機器大手の『ヴォックス』に33億円で売却したが、焼け石に水。21年3月期連結決算は58億9800万円の最終赤字で、2年連続の債務超過を回避できなかった。
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