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“プロ野球の聖地”東京・九段下『ホテルグランドパレス』49年の歴史の幕

(画像)Oleg Golovnev / shutterstock

6月いっぱいをもって東京・九段下の『ホテルグランドパレス』が49年の歴史に幕を閉じた。

オールドファンにとってはプロ野球ドラフト会議の会場として知られた同ホテルは、北の丸公園や日本武道館、靖国神社などにも近く、地上24階、地下5階、客室数458室、収容人数820人という老舗の大型ホテルだった。

グランドパレスを一躍有名にしたのが、1973年に起こった「金大中事件」である。当時、韓国民主化運動の指導者だった金大中元大統領が、ホテル22階の部屋に知人を訪ねたところ、韓国中央情報部に拉致され国外に連れ出されたのだ。このセンセーショナルな事件によって、皮肉にもグランドパレスの名は世界に知れ渡った。

しかし、昨年来のコロナ禍でインバウンド需要が消え、客室稼働率が1ケタに落ち込むなど経営が悪化。20年12月期の決算は、通常の3分の1以下まで売り上げが落ち、最終的に大赤字となった。

岐路に立たされている“ビジネス向け”ホテル

当初は今年6月末で一旦営業休止という予定だったのだが、2回目の緊急事態宣言が発令中の2月、6月末の営業終了を発表することになった。

「昨年に実施された『GoToトラベル』は、都市部のホテルには効果が見られませんでした。そもそもオンライン会議などのニューノーマルが定着し、出張が減る中で、ビジネス需要に主軸を置いていたホテルは、現在、大きな岐路に立たされています」(宿泊業に詳しい経済アナリスト)

前回の東京五輪が開催された64年は『ホテルニューオータニ』が開業するなど、ホテル文化が花開いた年として記憶されている。2回目の東京五輪を迎える21年が、〝ホテル衰退の年〟として後世に残らないことを願いたい。

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