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竹中平蔵パソナ会長と東京五輪~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

竹中平蔵パソナ会長と東京五輪~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 
森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 (C)週刊実話Web

竹中平蔵氏が6月11日に更新した自身のYouTubeで、日本のワクチン接種を遅らせた元凶として、族議員と厚労省の医療技官、日本医師会という「鉄のトライアングル」の存在を指摘した。竹中氏は、小泉内閣で経済財政担当大臣を務めたときから、鉄のトライアングル打破を掲げてきた。

今回のワクチン接種の遅れに関して竹中氏の指摘は正しいと思うが、一方で同氏の問題は、既得権益を打破した後、自らの仲間による新たなトライアングルを形成してしまうことだ。

典型が、竹中氏が会長を務める人材派遣大手の『パソナ』である。竹中氏が経済財政担当大臣を務めていた2004年に、製造業への派遣労働が解禁され、人材派遣業界は大きな成長を手にした。その5年後の09年に竹中氏はパソナの会長に就任している。パソナから受け取っている報酬は公表されていない。ただ就任から12年たつので、すでに数億円の報酬を手にしたことは間違いない。

竹中氏は自らの規制緩和で潤った業界に、見返りとして事実上の「天下り」をしたのではないか。そうした疑問を私は『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)で2回にわたり直接質したのだが、竹中氏は規制緩和自体に関与していないと真っ向から否定した。規制緩和を支持していたことは間違いないが、直接的には法改正に関与していないということなのだろう。

その竹中氏が、6月6日放送の『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)に出演し、分科会の尾身茂会長が、オリンピック開催について「普通はない」と発言したことを「明らかに越権」と批判し、その後も「世界に対してやると宣言した以上、やる責任がある」として、オリンピック開催を強硬に主張し続けている。

五輪開催はパソナの利益拡大と事実上同義

ただ、ここでも自らの利益のために発言している疑念が消えない。新型コロナで派遣需要が急減したため、パソナは窮地に陥り、昨年5月期の連結純利益は6億円まで減っていた。しかし、パソナは持続化給付金の事務作業を受託した。

持続化給付金事業は769億円でサービスデザイン推進協議会に委託されたが、749億円で電通に再委託、さらに645億円で各社に再々委託された。その中にパソナが入っていたのだ。パソナへの委託額は、170億円といわれており、飛び抜けて多かった。そして、今年5月期のパソナの純利益予想は、62億円と前年の約10倍に拡大しているのだ。

さらにオリンピックだ。パソナはオフィシャルサポーターとして、オリンピック関連の人材派遣を独占している。オリンピックが開催されれば、今年もパソナに巨額の利益が転がり込んでくる。つまり、竹中氏のオリンピック開催推進論は、結果的にパソナの利益拡大論と事実上同義なのだ。

竹中氏が、なぜパソナの会長に就任できたのか。直接本人から聞いた話では、たまたま飛行機でパソナの南部靖之代表と隣り合わせになり、同郷で意気投合したのだという。しかし、南部氏の出身は神戸で、竹中氏は和歌山だ。

1998年に小渕内閣の経済戦略会議の委員に就任して以降、竹中氏は四半世紀近くにわたって政府のブレーンを務めている。それを可能にしているのは、新しい竹中トライアングルの要として、仲間になれば確実に利益をもたらしてくれる存在だからなのではないか。

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