美術品や骨董品の世界では「だまされた奴が悪い」という暗黙の了解があるといわれる。そんな魑魅魍魎が跋扈する中、群を抜いて悪質な事件が発覚し、大騒動を巻き起こしている。
「昨年秋に東京で画廊を営む人物が、平山郁夫の作品に疑いを持ったことがきっかけでした。調べてみると平山郁夫2作品、東山魁夷3作品、片岡球子5作品の計10作品について、贋作と思われる作品が数多く流通していることが分かりました」(東京の古美術商)
さらに、画廊経営者らが調査を進めると、これらの大部分は「かとう美術」(大阪市北区)の加藤雄三代表が販売していたことが判明。10作品は、いずれも平らな石版や銅版に直接描かれた絵に、インクをつけて刷るリトグラフ作品だった。
購入した顧客に全額返金へ
リトグラフには刷られた枚数と番号を示すED(エディショナルナンバー)が鑑定書代わりにつけられるが、かとう美術はEDも偽造し、主にデパートに卸していたとみられる。贋作を扱ったのは、大丸松坂屋、阪急阪神、近鉄、そごう・西武の4社になるという。
「リトグラフ作品の真作は美術商からデパートへ、数十万円から100万円ほどで卸され、一般には150万円から300万円で販売されます。4社は贋作を購入した顧客に全額返金するとしています」(全国紙社会部記者)
かとう美術が贋作の作成を依頼したリトグラフ職人は、かつて真作も手がけたことのある経験者で、「1作品につき20枚、計200枚ほど作り、600万円余りの報酬を受け取った」として、すでに警察の事情聴取を受けている。
美術商の業界団体「臨時偽作版画調査委員会」は4月16日、かとう美術と加藤雄三代表を著作権法と不正競争防止法違反容疑で告発しており、警視庁は強制捜査に着手する方針だ。
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