
ワタクシ、面倒くさがりな性分でして、何かをマメにしっかりやるということが非常に苦手であります。これは釣りに関して特に顕著で、仕掛けは「置きっぱなし」の「放ったらかし」。ただ、この「置きっぱなし釣法」は、場合によってはかなりヒマを持て余すのが難点でして…。このヒマをいかに使うか。コレにいつも頭を悩ませるわけです。
ただし、今回についてはその心配は無用。私が竿を出している熊本県宇城市の三角西港は、世界文化遺産に認定された歴史的な港湾史跡。私が竿先を見ながら寝転がっているこの石積みの埠頭も、世界的に価値を認められた施設なのです。
なんて贅沢なんでしょうか。つまり、ヒマな時間は観光に当てればよいのであります。
そして「石積み」の隙間には、カサゴやソイといった根魚が潜んでいるのが必定。釣り人にとっては歴史的価値もさることながら、ポイントとしての価値にも目が行ってしまいます。ましてや明治時代から続く石積みですから、海中にはカニや小エビといった魚のエサとなるさまざまな小動物が付いているハズ…。
ということで、さらなるヒマ潰しのために愛用の安竿を取り出し、足下の護岸際を探ってみることにします。

そういえば、ここまでまったく触れていませんでしたが、実は深場でジッとしている〝越冬ギス〟が本命。しかし、冬場のシロギスは盛期のように活発で個体数が多くはありませんから、投入後は放置が基本。ゆえに、ヒマを持て余していたわけですな。
して、件の安竿に2本バリの胴つき仕掛けを結び、エサを付けて探り歩き開始。ほどなく「プルンッ!」と弱々しい手応えが伝わって小さなフグが釣れました。フグは食べられないだけでなく、鋭い歯で糸を噛み切ってしまうので厄介な存在です。また、時と場所により大量に湧くこともあって非常に「せからしか~」なヤツなのです。
排水の奥が何やらニオう!?
「フグの猛攻に遭ったら面倒だな…」
そんな心配をしながらエサを付け替えて再び仕掛けを落とします。しかし、フグによる邪魔はそれほではなく、たまにエサを取っていく程度。ひとまず安心です。
「ゴツッ!」
仕掛けを上下させながらしばらく探っていくと、明確な手応えで小さなカサゴが釣れました。やっぱり根魚いるじゃないの~。小型ゆえ放流しましたが、この1尾で探る手に力も入るというものです。
この釣果に気をよくして護岸際を探っていきますが、ふと、近くにある排水路が目に入りました。この石積みの排水路も明治時代に造られた世界文化遺産の一部であり、排水が流れ込むこともあって魚が着いている気配を濃厚に感じます。

「奥はど~なってんのよ!」
スケベ顔で仕掛けを突っ込んでみたところ思いのほか浅かったのですが、根魚はこの程度の水深でも可能性は十分。信じて探るのみです。
「ゴツッ! ゴツゴツッ!」
期待どおりのアタリに興奮しつつ、ひと呼吸置いて竿を煽ります。
「ゴツゴツゴツッ!」
心地よい手応えで釣れ上がったのはムラソイでした。それほど大きくはありませんが、気になったポイントで狙い通りに釣れるというのは嬉しいものです。

世界文化遺産の石積排水路で釣れたムラソイですし、晩酌の肴として丁寧に持ち帰ることにしました。
見た目は本格! 即席のご馳走に
ムラソイやカサゴといった根魚は甘辛く煮付けるのが定番ですが、たまには揚げ物にしてみましょう。
下処理したムラソイに片栗粉をまぶし、丸ごとから揚げにします。香ばしく丸揚げになったムラソイを皿に盛り、茹でた青菜でぐるりと取り囲みます。そこに温めたレトルトの中華丼の具を流し入れて完成! シンプルなから揚げが、中華あんかけに大変身です。
合わせる酒は、近所のスーパーで買った安物の紹興酒。見た目だけはちゃんとした中華料理店で晩酌している雰囲気になりました。

さっそくかぶりついてみると、淡白な白身に衣の香ばしさ、あんかけの濃厚な味が絡んで酒が進みます。ただ、丸揚げにしたため小骨は少々やっかいでしたが…。
ということで、投げ釣りでシロギスを狙いつつ、石積み護岸の際を狙って根魚も楽しめた今回。ついでに世界文化遺産観光も満喫できて、充実の1日となったのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。