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『カンパチ』神奈川県三浦市/宮川産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

長年釣りをしていると、何らかの事情で養殖施設から逃げ出した魚が釣れてしまうことがあります。

「魚に名札なんて付いていないのに分かるの?」

釣りをしなかったり、魚を見慣れていない方はそう思われるかもしれません。ただ、長年魚を見ていると天然と養殖は、おおよそ見分けがつきます。

そういった個体は釣り人から〝脱走兵〟などと呼ばれ、大型台風などで養殖施設に被害が生じて大量の魚が逃げ出すと、〝集団脱走〟などと言ったりするんですな。養殖業に従事される方々にとっては甚だ不謹慎な話ではありますが、今回はそんな〝脱走兵〟捕獲のお話です。

普段は足場の良い堤防でのんびりと竿を出しているワタクシですが、たまには炎天下の磯で投げまくるのもよかろうと、神奈川県の三浦半島先端付近に位置する宮川の磯にやってまいりました。もちろん、1人でこんな場所に来るわけはなく、磯釣り好きの仲間2人に連れられての釣行です。

好天の休日とあって、磯の各所では青物狙いと思しきスタイリッシュな釣り人が竿を振っており、普段とは違う光景に新鮮な気持ちになります。ただ、人気釣り場だけに後続も絶えず、我々もそそくさと空いている場所に釣り座を構えて準備に取りかかります。

それにしても暑い! 仕掛けを組み上げる間もポタポタと汗が滴り落ちます。まぁこれも夏らしくていいものですが、持参した飲み物がどんどん減って若干の不安を覚えます。

秘密のエサにまさかの大物!

ワタクシともう1人はカワハギ狙い、そして誘いをかけてくれた料理人の仲間は石物(イシダイやイシガキダイ)も視野に入れた仕掛けを組み、ハリに貝やイカを付けて沖の岩礁周りに放り込んでおります。

『カンパチ』~神奈川県三浦市/宮川産~日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

夏の高水温期とあって魚の活性は高く、開始早々からエサがボロボロにされてしまいます。たまにハリに掛かるのも、カワハギ狙いの定番外道であるベラの類いばかり…。おいしい魚ではありますが持ち帰るにはちょっと忍びない大きさゆえ、釣っては逃がして投入を繰り返します。

「3人並んで竿を出しているのだから、誰かしらに本命が掛かるでしょう」

そう思っていたところ、石物狙いの仲間がクーラーボックスをゴソゴソと物色しております。よく見ると、あらかじめ塩で締めておいたムール貝のムキ身をハリに付けているようです。

「ムール貝もチ○ポコも、塩締めが効くのよ! これで石物捕ったるわ!」

…? ちょっと何を言ってるのか分かりません…。炎天下の磯で竿を出し続けたせいで、おかしくなってしまったのでしょうか。

しかし、釣りとは実に不可思議なもので、コレが結果的に大正解だったのです。

「何かアタってる~」

ムール貝投入からしばらくして上がった声に振り向くと、件の〝塩締め竿〟にアタリが出ています!

もらい物の“頭”で大満足の晩酌

竿はそれほど曲がっていませんが念のため、玉網を携えて近づきます。磯際まで寄せると急に暴れ始めましたが、強引に巻き上げます。やがて磯際に浮かび上がったのは銀色の特大魚体。

興奮しながら玉網に納めて引き上げたのは70センチ級のカンパチ! 予想外の一発に、釣り上げた本人は喜びにうち震えておりました。

『カンパチ』~神奈川県三浦市/宮川産~日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

取り込んだ魚体をよく見ると、背ビレや尾部のウロコに傷みがあり、まぶたも傷ついて白濁しています。貝のムキ身に食ってきたことを考えても、コイツは何らかの理由で養殖網や定置網から脱出(もしくは放出)した個体でしょう。この磯の沖には定置網がありますし、目と鼻の先の距離にある三崎港には養殖イケスが浮かんでいますからな。

そんな不憫な運命の一尾は、釣り上げた本人がキッチリ血抜きを施してお持ち帰りです。

「こないだのアシストの御礼を送ったから食べて」

釣行の翌日、件の仲間からこんなメッセージが届きました。やがてクール便で届けられたのは、あのカンパチの頭! ありがたく半割りにし塩を振って焼く、いわゆる〝カマ焼き〟にして冷酒とともに堪能します。

『カンパチ』~神奈川県三浦市/宮川産~日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

骨の間に詰まった身は味が濃厚。程よい脂乗りも感じられて大変美味しゅうございました。

思わぬサプライズに恵まれて磯場の実力を痛感した釣行でしたが、夏場の磯釣りは〝物好き〟だから為せることを、翌々日になっても引かない腕の日焼けの痛みによって痛感した次第であります。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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