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「バブル崩壊」再び…”Xデー”はいつか?~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 
森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』  (C)週刊実話Web

バイデン新政権が発足した1月20日も、米国の株価は史上最高値を更新した。新型コロナの感染拡大で経済が低迷しているのに、なぜ株価は上昇し続けるのか。答えは明白である。バブルが起きているからだ。

バブルのメカニズムは極めて単純だ。第1に、何か魅力的な投資の対象が注目される。第2に、それを買い求める人が増えて価格が上がる。第3に、価格が上がったために、初期に投資をした人が値上がり益を得る。第4に、それを見ていた他の人々が同じような利益を得ようとして、あるいは、いま買わないともっと値が上がるという焦燥感から市場に参入する。第5に、2番目から4番目の現象が繰り返されるために、値上がりがさらに確実なものとなり、投機の輪が広がっていく――というものだ。

つまり、バブルが発生すると資産の価格が、本来の価値とは無関係に上がっていく。

ただし、バブルは永遠には続かない。生涯にわたってバブル研究を続けたガルブレイスも、「バブルは必ず崩壊する」という法則を発見している。しかし、同時に「バブルの崩壊時期を正確に予測することは、誰にもできない」とも言っている。今回は、その不可能に挑戦しようと思う。

バブルが崩壊する一つのパターンは、金融当局によるバブル退治だ。例えば、日本銀行は1987年2月に公定歩合を2.5%まで引き下げたが、89年5月に3.25%へと引き上げ、その後も急速な引き上げを続けた。一方で当時の大蔵省は、90年4月に不動産融資を規制する総量規制に踏み切った。それがバブル崩壊の原因になったのだ。

今回も金融当局は、バブルを苦々しい思いで見ているはずだ。山高ければ、谷深しで、大きなバブルの後には、経済の長期低迷が待ち受けているからだ。

金融当局の足元を見透かす投機家たち

だが、いまのところ金融引き締めの動きはない。新型コロナの感染拡大で経済が疲弊するなか、それをしたら壊滅的な打撃を与えてしまうからだ。投機家たちは、そうした金融当局の足元を見透かして、安心して株価の吊り上げに出ている。

だから、金融当局が行動に出るのは、新型コロナに収束の目途がつき始めた頃になるだろう。いま世界中で接種が始まったワクチンに効果があると仮定すると、5月ごろには経済も上向き、金融当局が引き締めに出ることが可能になるのではないか。経済の回復とともに株価が暴落するという、皮肉なことが起きるのだ。

ただ、それよりもタイミングが早くなる可能性がある。例えば、米国の長期金利の上昇だ。昨年12月に0.9%だった長期金利は、今年に入って1.1%まで上昇している。バイデン政権の大型経済対策によって、財政赤字が拡大すると市場参加者は見込んでいるからだ。

長期金利が上がれば、株価にはマイナスに働く。安全な国債で資金を運用しようとする投資家が増えるからだ。米国の長期金利が2%を超えれば黄信号、3%を超えたら赤信号とみるべきだろう。

さらに、大地震や台風などの自然災害や戦争など、バブル崩壊のきっかけになり得る事象は多い。膨れ上がった泡は、わずかのショックで破裂する。ただし、ワクチンが効かず、さらなる感染拡大が起きれば、バブルは一層膨らむ。そこまで行った場合、崩壊後に待ち受けるのは一面の焼け野原に違いない。

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