社会

北朝鮮の女帝・金与正『デスノート』で韓国外相のクビが飛んだ!?

文在寅大統領
文在寅大統領(画像)Truba7113 / Shutterstock

1月20日、韓国の文在寅政権は3省庁の内閣改造を断行した。今回の内閣改造で注目されたのは、康京和外交部長官(外相)の電撃交代だ。

「実際は交代ではなく更迭です。康長官は昨年の12月8日、バーレーンで開かれた中東地域の国際会議で、『北朝鮮は韓国の新型コロナ対応支援の提案に、感染者ゼロを理由として反応していない。いかにも北朝鮮らしい』と、金正恩総書記のコロナ感染者ゼロ主張を皮肉ったのです」(在日韓国人記者)

これに対して正恩氏の実妹、金与正氏は、談話で康長官を取り上げ「生意気な妄言」「末長く記憶する」とこき下ろした。

「外交関係者の間では、康長官の〝舌禍〟による更迭があり得るとの観測が流れていましたが、それが現実となったのです」(同・記者)

韓国では過去にも、金然哲元統一部長官や鄭景斗元国防部長官が、与正氏や北朝鮮の党幹部を非難した後に更迭された前例があるだけに、康長官交代の背後にも与正氏の圧力があったという見方が出ている。

また、与正氏が脱北者団体によるビラ散布を非難し、韓国政府に対して「(禁止)法でも作れ」と述べた際にも、この発言を〝下命〟と受け取った韓国統一部は、即座に法案成立に向けての準備に入っている。

このような事例があるだけに、青瓦台(韓国大統領府)も「与正デスノート」の存在を否定しようと躍起になっているようだ。

北朝鮮の言いなりになっている文在寅政権

「青瓦台はデスノート説について、急きょ記者らにメールを送って否定しました。その中で《国論を分裂させる無理な推測で、まったく事実ではない》と強調し、外相の交代理由については《すでに康長官は何度も辞意を表明しており、バイデン政権の誕生に合わせて新しい外交・安保ラインを構築しただけ》と釈明したのです」(同)

しかし、韓国国民の間では「青瓦台の説明はそうであっても、文政権はあまりにも北朝鮮の言いなりになっている」との批判が渦巻いている。

実際、韓国国会は昨年12月14日、南北関係発展法を一部改正し、北朝鮮に対する「ビラ散布」を禁止する法律を本会議で可決した。野党が強く反発する中、与党が強行採決に踏み切った末の可決だった。

米国のバイデン大統領は、かねてから「トランプ氏の北朝鮮政策は甘い」と批判しており、「ビラ散布禁止法」の制定についても韓国政府の対応に疑問を呈しているという。

そして、大統領就任後の1月22日には、サキ大統領報道官が「北朝鮮の核ミサイル開発は世界の平和と安全の深刻な脅威だ」とした上で、日韓と協議しながら「北朝鮮政策の見直しを始める」と表明した。

バイデン政権が韓国に対して、北朝鮮への従属ぶりの修正を迫るのは既定路線だろう。

脱北者が作成した“与正ポルノ写真”に激怒

ところで、与正氏が韓国からのビラを嫌っている本当の理由は別にある。

「北朝鮮の最高人民会議常任委員会は、昨年12月4日に開かれた総会で『反動的思想・文化排撃法』を採択しました。その27条に《南朝鮮(韓国)の映画、録画物、編集物、図書、歌、図画、写真などを直接見たり聞いたり保管したりした者は、5年以上15年以下の労働教化刑(懲役刑)を宣告され、禁止コンテンツを流布させた者は、無期労働教化刑(無期懲役刑)や死刑など最高刑に処す》とあり、厳罰化を規定したのです」(北朝鮮ウオッチャー)

この法律は、反社会主義文化を取り締まると同時に、金ファミリーのさらなる権威付けを目的としている。そのためには、韓国からのビラがもたらす情報を完全に封殺しなければならないのだ。

というのも、脱北者の市民グループが飛ばした風船ビラの中には、与正氏を加工したポルノまがいの合成写真がまじっていたばかりか、正恩氏の妻・李雪主氏や側近男性が裸で寝転がる合成写真もあり、こうした描写に与正氏が激怒したとも言われている。

「北朝鮮では金ファミリーが絶対的な存在であるため、特に出生にまつわるウワサは厳しく取り締まられます。正恩氏は不倫の子であり、母親の高容姫氏は在日朝鮮人(日本からの帰国者)で、本来なら身分は敵対階層に属します。なので、北朝鮮国民にビラの内容を知られてはならないのです」(同・ウオッチャー)

金ファミリーのスキャンダルはタブー中のタブー

韓国に亡命した李韓永氏は1997年、金正日総書記の命で暗殺された。同氏は金ファミリーの一員であったが、その内幕を記した暴露本を韓国で出版したことで粛清の対象となっていた。それほどに金ファミリーのスキャンダルは、タブー中のタブーなのだ。

「暗殺された金正男氏(正日氏の二番目の妻・成蕙琳氏の長男)は、金日成主席の膝の上で抱っこされたことがありますが、高容姫氏の子である正恩氏は存在さえ知られていなかった。それが正恩氏にとって、どれほどの劣等感になっているか計り知れません」(同)

与正氏はビラをまく脱北者らを「母国を裏切った人間のくず」「ゴミのような雑種犬」と呼び、韓国政府を暗示して「飼い主に責任をとらせる」とコメントしている。

「ビラ散布禁止法を批判した太永浩氏や池成浩氏(ともに脱北者で現在は韓国の国会議員)も、与正氏にとって許しがたい存在でしょう」(前出の韓国人記者)

次に「与正デスノート」に記載され、血祭りに上げられるのは誰だろうか。

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