「緊急事態宣言を再び発令した場合、無観客もあり得る」。菅義偉首相は7月1日、東京五輪・パラリンピックの観客について、そう語った。
この発言通り、東京都では4回目となる緊急事態宣言(7月12日~8月22日)を発令。7月23日開幕の東京五輪は1都1道4県(福島・埼玉・千葉・神奈川)で無観客が決定した。
競技会場が無観客になったとはいえ、都内のコロナ感染状況は拡大傾向に転じている。しかも、ウイルスは〝戦国時代〟を生き残るため、どんどん変異を重ね、より感染力が強く、病原性の高い新たな変異ウイルスを生み出しているのだ。
公衆衛生が専門の医師で作家の外岡立人氏が言う。
「コロナ第4波のピークから現在までの1日の発生感染者数を見てみると、6月14日からの2週間の平均値は1428人となり、五輪が実行可能なレベルの500人にはほど遠い。東京に関して言うなら、継続的に1日の感染者数100人以下が必要です。到底、五輪を開催できる状況ではない。政府には正しい状況を示せと言いたいが、あえて曖昧にしているのは専門家に突っ込まれるからではないかと思いますね」
ワクチン接種先進国の英国では、東京五輪を無観客にしなければならないモデルケースが起きていた。
「英北部スコットランドの公衆衛生当局が発表したところによると、6月中旬以降に行われたサッカー欧州選手権の3つの試合を応援するため、競技場やパブなどに市民ら2000人近くが集まり、新型コロナの感染が確認された。1つの会場では、実に約400人が感染した例もある。密の状態で感染が拡大したようです」(サイエンスライター)
興奮した市民が乱痴気騒ぎして感染…これまで繰り返された絵に描いたような光景だ。
政府の水際対策は“ザル”同然
「ウイルスの変異にも注意しなければなりません。現在、世界には『懸念される変異株(VOC)』と、VOCになる可能性があり監視を要する『注目すべき変異株(VOI)』がある。世界保健機関(WHO)は、VOC4種類、VOI7種類の合計11種類の変異株が存在するとしています。他にも、変異株は存在するが、WHOの監視対象にはなっていません」(同・ライター)
英国で生まれたアルファ株は今や通常株になりつつあるが、日本にとって脅威なのはインド型のデルタ株だ。さらに、秋頃にはデルタ株が「デルタプラス」に置き換わるという。そして、世界的に見ると、これから警戒しなければならないのが、南米ペルーで猛威を振るっているラムダ株なのだ。
「ペルーは人口10万人当たりの感染死者数が約600と世界最悪です。4月以降の感染者のうち80%強をラムダ株が占めたとWHOは報告している。ラムダ株は隣国のチリでもまん延し、感染者の30%以上を占めているほど」(同)
南米各国からも東京五輪に選手は参加する。もし、選手団から厄介な変異株が持ち込まれたら最早、手の施しようがない。
日本入国の際のチェックの甘さは、オリンピックに参加するために来日したウガンダ選手団の1人が検査で「陽性」と確認されたことでも分かる。
「政府の水際対策は〝ザル〟同然です。陽性と判定された選手以外の8人の選手らが濃厚接触者かの判定を受けないまま入国させ、事前合宿地の大阪・泉佐野市へ移動してしまった。おそらく、この手の不祥事は他の地方都市でも起きるでしょう」(全国紙社会部記者)
東京五輪は「平和の祭典」どころか「変異株の祭典」になりかねないのだ。
マスコミもグルになって東京五輪開催を支援!?
もっとも、ワクチン接種が進んでいるから「大丈夫だ」と言う人がいるかもしれない。しかし、米疾病対策センター(CDC)によると、米国で使用を認められている新型コロナワクチンは現時点で日本国内にまん延している変異株に対しても予防効果はあるものの、ワクチン接種を完了している人であっても症状を引き起こす可能性があるとした。いかなるワクチンも100%発症を防ぐ効果があるわけではないのだ。
さらに、心配なのは前述したラムダ株がワクチンの効果を大幅に低減させる恐れがある点だ。ワクチンの有効性が3~5倍程度、激減することを指摘している研究者もいるほどである。
WHOは先頃、ラムダ株をVOIに指定した。厚生労働省も6月15日付の報告でWHOの指定を伝えている。ところが、6月23日の厚労省専門家会議『アドバイザリーボード』の資料には、VOIのリストにラムダ株が載っていなかったのである。
「ウガンダの選手を簡単に入国させてしまった件といい、日本の役人は危機管理の意識が低すぎます。東京五輪・パラリンピックが無事終了するのか甚だ疑問ですね」(同)
最後に外岡氏が、こう警鐘を鳴らす。
「7月初旬、予想より早く第5波の萌芽が出てきました。2週間後には明らかに感染者数の急増が始まる可能性がある。感染速度は相当速い。進めているワクチン接種について、今のデルタ株に効くのかどうか、国民が知りたがっていることについて、報道陣は質問しない。会見を見ていて思ったのは、マスコミもグルになって東京五輪開催を支援しているのではないかということです。日本は最悪のコースを歩んでいます。五輪開催で死者数も相当増えるでしょう。おまけに、台風シーズンを迎えている。台風で避難してきた人にどう対応するのか。そのことが首相の頭に入っているとは思えません」
コロナ禍の〝人災〟は拡大する。
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