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阪神V戦線ぬか喜び…「東京五輪」と「公式戦」“ダブル中止”負の連鎖

甲子園球場
甲子園球場(C)週刊実話Web

「今年は優勝や」と盛り上がる阪神タイガースと、白血病を乗り越え五輪切符を勝ち取った競泳の池江璃花子。2021年の主役に浮上したが、ともに〝ぬか喜び〟となりかねない負の連鎖が始まった。

阪神タイガースの本拠地、大阪や兵庫で猛威を振るう変異株が東京など東日本にも広がり、全国の新型コロナウイルス感染者は、この1カ月で4倍に増加。流行の第4波へ警戒を強める政府は、大阪、京都、兵庫、宮城、沖縄、東京に続き、神奈川、千葉、埼玉、愛知などでも「まん延防止等重点措置」が4月20日から適用され、10都県に拡大する。

「自民党の二階俊博幹事長も『無理ならすぱっとやめないと』などと発言するなど、東京五輪の開催もいよいよ怪しくなってきました。菅首相の渡米中に、水面下でアメリカの了承を得て、再延期、もしくは中止が決まるかもしれません」(政治部記者)

飲食店の営業時間が午後8時までに制限されるなど、各方面で打撃を受ける中、日本中を盛り上げているのが阪神の快進撃だ。オープン戦優勝の勢いそのままに、4月10日には両リーグ「10勝」一番乗りを達成。コロナ禍で「六甲おろし」や「選手の応援歌」の大合唱はできないが、2002年以来の優勝へ期待は高まるばかりだ。

「今季は復活したエース藤浪晋太郎とドラフト1位ルーキーの佐藤輝明が投打でけん引し、同2位の伊藤将司も巨人戦でプロ初勝利を挙げるなど、2位だった昨季よりも戦力が底上げされました。残る心配は、シーズンが途中で打ち切られ、ぬか喜びに終わることです。現に無観客試合にするという情報も伝わっています」(在阪・テレビ局関係者)

この盛り上がるタイミングで「まんぼう」適用地域が拡大された。コロナは感染から発症までの潜伏期間が5~6日程度。大阪府の吉村洋文知事は、対策の効果が数字に出るのは今週からだとし、「収束しなければ、緊急事態宣言以上の強力な対策を実施せざるを得ない」と話している。

そのため「まんぼう」の適用期間中、阪神は入場券の一般販売を止め、年間予約席の購入者だけを入場させているが、今後は観客を5000人以下に引き下げるか、無観客試合にする案も検討しているという。

数十億円の損失で存続維持できない球団も

「阪神に限らず、各球団は観客の50%の入場制限を想定して今年度の予算を組んでいます。甲子園球場の場合は1試合あたり2万3754人。それを無観客や5000人に規制された場合、売り上げが数十億円ほど落ち込みます。内部留保金の大きい阪神はまだいいですが、継続が立ち行かなくなる球団も出かねません」(野球担当記者)

そこで声を上げたのが、阪神とともに首位を走るパ・リーグ東北楽天の三木谷浩史オーナー。各球団オーナーも憂慮する東京五輪開催優先に伴うプロ野球の「実質切り捨て」に対して、三木谷氏は、自身のツイッターで「五輪開催はあまりに、リスクが高すぎると思っており、反対です。冷静に開催の見直し、または順延を国際オリンピック委員会(IOC)と協議すべきだ」と訴え、今夏の開催に断固反対している。

ネットの書き込みでは、「プロ野球やJリーグはよくて、五輪はダメなのか。天に唾する発言」などと揶揄する声もあるが、話の構図はもっと複雑だ。東京オリンピック・パラリンピック開催とプロ野球は、実は相反関係。大手広告代理店の五輪担当者が次のように解説する。

「東京五輪の開催を最も望んでいるのがIOC。総収入の7割超が五輪の放映権料で、米NBCテレビと結んだ放映料は総額で約1兆3300億円。すでにその一部を各競技団体に分配金として渡しており、中止になれば収拾がつかなくなる。その五輪前にプロ野球でクラスターが発生すれば大変。だから入場規制を求めている。球界からすれば、逆に五輪が中止になれば通常の観客動員ができるわけで、まったく噛み合わない。要求に応じて五輪開催にこぎ着けても、五輪でクラスターが起きれば、五輪後のプロ野球再開は絶望的になる」

池江璃花子を五輪開催の世論形成に利用!?

全国紙など各主要メディアの世論調査でも、今夏の五輪開催に反対、再延期を求める回答は今なお80%を超えている。国外に目を向けても、コロナの感染拡大でロックダウンを余儀なくされている国は少なくないし、トレーニングもままならないのが実情だ。

国内外の世論が「中止論」に傾く中で救世主となったのが、競泳の池江璃花子だ。一昨年2月に白血病と診断されてから、闘病生活を乗り越え、先週行われた競泳日本選手権では出場した4種目で優勝。派遣標準記録は切れず個人での代表入りはならなかったが、400メートルリレーと同メドレーリレーの代表が内定した。

「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。つらくても努力は必ず報われるんだなと思った」

そう言って流した美しい涙に、日本中が感動。メダル獲得以上に、彼女の東京五輪出場を見たいという期待が高まった。

何としても五輪を開催したい大会組織委員会は、CM、ポスター、グッズを差し替えて五輪ムードの醸成に躍起だが、池江自身は当初の予定通り、体調が戻る次のパリ五輪でのメダル獲得を念頭に置いている。また、彼女の周辺も五輪開催の世論作りに利用されるのを警戒しているという。

「白血病の克服と際立った容姿。プロに転向すれば、年間2億円は稼げます。東京五輪が中止になっても、代表選手の名誉は残ります。誰より東京五輪の中止を察知し、冷静に行動しているのが彼女です。そのほうがいっそう付加価値が高まります」(大手広告代理店)

池江の復活と五輪の開催可否は別問題。お涙ちょうだいに便乗するスポーツマスコミの報道を鵜呑みにするのは危険極まりない。

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