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『おとこ道』 人種差別描写で大問題に発展…哀しき“封印漫画”の世界

『おとこ道』1970-1971 原作・梶原一騎 作画・矢口高雄/小学館

当時、ライバルの『週刊少年マガジン』に大きく水をあけられていた『週刊少年サンデー』が、ヒットメーカー・梶原一騎を招いて劣勢挽回を図ろうとした野心作。戦後混乱期をたくましく生きた男のビルドゥングスロマンなのだが、闇市での奮闘を描いた描写が差別的であるとして大問題となった。

闇市を牛耳っていた「第三国人」との抗争場面では、「国敗れて山河あり!! 国敗れて民族の魂あり!!」という惹句が示す通り、多分に国粋的な描写がなされ、「第三国人」の悪辣行為が必要以上にクローズアップされたため、「在日外国人の人権を守る会」などが猛抗議。小学館は「差別の意図は全くなかった」と弁明したが理解は得られず、結局は全面的に謝罪した。

騒動の後に物語は明らかに停滞…

その後、コミックス化された際に「第三国人」は「K国人」に修正されたが、再び抗議を受けて絶版となった。

2001年に出版された復刻版では、すべて「不良外人」という言葉に言い換えられ、登場人物たちの特徴的な言葉づかいも同時に改められている。

抗議団は梶原の自宅にまで押しかけたが、飾ってあった極真空手の名誉初段の免状を見て、大山倍達との親交を知り、差別の意図がなかったとして引き揚げたといわれる。しかしながら、騒動の後に物語は明らかに停滞し、大きなドラマ的展開も見せず、梶原的な壮大なハッタリのひとつもないままに終わりを迎えてしまった。

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