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『燃える!お兄さん』 差別ネタで回収騒ぎに…哀しき“封印漫画”の世界

『燃える!お兄さん』1987-1991 佐藤正/集英社

突然現れた「おにーさん」と周囲の個性的すぎるキャラクターが、織り成すというほどのストーリーらしいストーリーもないドタバタギャグ漫画。主人公の矯正を目指す副担任の熱血サイボーグ教師・早見姿朗(モデルは宮内洋?)が用務員となり、主人公から立場が変ったことをからかわれる「サイボーグ用務員さんの巻」が大問題に。

該当話を掲載した号の発売日翌週、自治労大阪府本部などが「用務員に対する蔑視と偏見に満ちており、差別を助長、拡大する」と抗議し、集英社側は全面的に謝罪、掲載号の回収と該当エピソードを封印することに合意した。

回収できたのはたった450万分の10万!?

とはいえ当時の『週刊少年ジャンプ』は右肩上がりに部数を伸ばしており、返本率も一桁台とほとんど「完売」状態。当該号を500万部としても450万部以上売れていたわけで、発売から1カ月以上が経過して市中在庫があるはずもなく、それを送料負担で回収、しかも郵送すればジャンプロゴ入りのシャープペンシルをプレゼントするという破格の措置を取ったのである。

この呼びかけによって回収された掲載号は10万部に及ばなかったとされるが、それでも集英社本社の地下2階と地下3階が天井までジャンプで埋まり、回収措置にかかった費用は1億円を超えたといわれている。

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