今でも、古い神社仏閣の裏手には、小さな祠や宮がある。
明治の廃仏棄釈のときに分祀された末祠の場合もあるが、「黒宮」などと呼ばれ、子供たちが親たちから近寄ってはいけないといわれている“禁断の地”であることも多い。また、黒宮がなくても、なぜか神社仏閣の裏手は〝魔のパワースポット〟になりがちだ。
都内にも、そんな話がある。江戸時代から続く江東区の『深川不動尊』は、昔は裏手に池と小さな祠があり、昭和の時代には「幽霊が出る場所」として、近所の子供たちから恐れられていた。
こんな話が伝わっている。人力車が走っていた頃、ある雨の日の夕刻に不動様に参詣した人が、池のほとりで人力車を呼び止めて乗り込んだ。ぴしゃぴしゃと泥を跳ねながら威勢よく走り出した車夫の足音が響く。そして人力車の後ろからも、後押ししているらしい助手の足音が聞こえてくる。
当時は夫婦で人力車を営み、妻が後押しをすることもよくあったので、乗客はこの車もそうだと思い、我が家に着いたときに「おかみさんの分だ」と多めに車賃をはずんだ。ところが、車夫は哀しそうな顔で「また出ましたか」という。
訳を聞くと、先ごろ幼子を残して女房が病死したが、道のぬかるむ雨の日の夜になると、決まって女房の霊が出て、車を後押ししようとするのだという。
「その心根が可哀そうで…」と車夫は涙ぐんだという。
子供の溺死が相次ぐ「木場」の呪い
深川周辺といえば、材木集積地として名高い「木場」がある。今は埋め立てられたが、つい最近まで木場は、木材を運んだり貯蔵する堀が、縦横に張りめぐらされていた。付近の子供たちは、危ないから絶対に堀の材木に乗ってはいけないと言い含められていたが、子供にとっては格好の遊び場である。
材木は、ただ並べて浮かべられているだけなので、ちょっとした拍子で間が空き、うかつに乗ると、その隙間に落ちてしまう。落ちたら最後、材木はぴったり閉じてしまい、大人でも浮かび上がることはできない。
そんな調子で年に何人もの子供が溺死していた木場のあたりでは、夜、堀の淵を歩いていて、材木の上で遊んでいる子供を見かけても、けっして声をかけてはいけないと言われていた。声をかけると、堀に誘い寄せられて水に引き込まれてしまうのだという。
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