1991年の湾岸戦争で、巨額の軍資金を多国籍軍に拠出させられながら、解放後にクウェートが挙げた感謝対象国のリストに日本の名はなかった。
痛恨と赤っ恥の大失策だが、この背景には当時の(今も?)政府の決断のグズつき具合にかてて加えて、大蔵省(当時)と外務省の不毛な対立が災いしたのも無念の事実。
顧みれば80年代に、グリコ・森永事件の犯人グループをあと一歩まで追いつめながら逮捕を逃した大きな要因として、各府県警同士の縄張り意識が円滑な連携を阻害したと指摘する声も厳しい。しかしその種の悪しきセクショナリズムがもたらした惨劇の中で、最も忌むべきものは先の大戦における陸海軍の不協和音、不一致にこそ万感の思いを込めてとどめを刺すべきではないか。
この歴史を抱き締めねばなるまい
昭和の末から、長らく大東亜戦争(『太平洋戦争』とは、19世紀末の南米を舞台にペルー・ボリビア連合軍とチリの間で勃発した戦争を指すはずで、比較にならぬ作戦規模と戦闘領域の広大さからしても、この呼称が適当)に従軍した元将兵たちの肉声に、個別の取材や秘密の座談会を通して接し続けた著者2人による対談の本書。濃密な読み応えだが、いわゆる〝盛られた〟戦史や体験記、美化されたいっぽうの記録のベールが剥がされるたび、やりきれない疲労感、他人事でない慚愧の念に駆られて覚えず胸をかきむしりたくなってくる(今更遅いが)。
緒戦の優勢が覆るきっかけとなったミッドウェイ海戦の敗因のひとつに、偵察機の出撃時間の遅れがあったのは戦史に興味ある者なら周知のごとくまた映像作品でも繰り返し再現されてきたが、遅延に到る真の裏事情が本書で語られる内容通りなら愕然、である。だがそれでも粛然と、この歴史を抱き締めねばなるまい。
(居島一平/芸人)
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