「ヘアヌード」なる言葉は、令和の時代はすでに死語だ。しかし、だからこそヘアヌードとは何だったのか、あの時代の熱狂・喧騒は何だったのか振り返る必要はある。
『ヘアヌードの誕生』(イースト・プレス/1980円)は、アダルトメディア研究家の安田理央氏が、「芸術と猥褻の間で陰毛は揺れる」をテーマに執筆した力作だ。
絵画芸術ではヘアブーム以前の昔から、全世界的に陰毛を描くことが当然だったことにはじまり、なぜ日本では裸体まではOKでヘアはNGとなったのか、まずその歴史を振り返る。
そして「ビニ本」を経て突然、一般に陰毛が浸透する。きっかけは1冊の写真集。以降は洪水のように雑誌にまでヘアが載る。週刊誌までこぞって毛・毛・毛。
追い詰められていったヘアヌード…
だが、どんなブームもいずれ終息する。アダルト系雑誌の摘発も相まって、ヘアヌードは追い詰められていく。そのうち、「誰も陰毛を語らなくなった」と安田氏。そんな「ヘアヌード全史」といえるヒストリーが、こと細かにつづられる。
筆者は、かつて雑誌編集者としてヘアブームの真っ只中にいた。誌面にヘアを露出しすぎてはいけない半面、ヌキどころのページにはヘア付きカットをデカく載せるというルーティンを繰り返していた。「あの仕事は何だったんだ?」と思い出すと、結局は「祭りだった」(安田氏)と思うしかない。
週刊実話の読者は今、あの狂乱のブームをどう感じているだろう。本書を読んで、各人が振り返るのも一興だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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