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蝶野正洋『黒の履歴書』~プロスポーツとマスコミの関係性

蝶野正洋『黒の履歴書』~プロスポーツとマスコミの関係性 
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web

プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、試合後の記者会見を拒否して大きな話題となった。

この問題が世界中で議論され始めると大坂選手はメンタルの不調を訴え、全仏オープンを棄権してしまった。

大坂選手は若くしてトッププレイヤーとなったから、自分が思っている以上に発言力が増してしまったというのもあるし、そのプレッシャーは計り知れないと思う。だからこそ、今はゆっくり休んで、またモチベーションを高めて競技に戻ってきてもらいたいね。

メンタルの話は一度置いて、試合後の記者会見に一石を投じたことについて考えてみたい。プロレスとはジャンルは違うかもしれないけど、試合後の記者会見を拒否したくなる気持ちは俺も理解できる。

単純に疲れているし、負けたときは気持ち的にもしんどい。アドレナリンも出てるから、思ってもいないことを口走ってしまうこともある。そんな状態であれこれ質問されるのは、単純に嫌だと思うよ。

でも、プロと名乗っている以上、記者会見をすることも仕事だと思う。記者やカメラの先にはファンがいて、応援してくれるからプロとして生活できる。記者会見もファンサービスの一環なんだよ。

だからこそ、プロスポーツというのはメディアがすべて。試合以外の部分まで含めて選手の姿を伝えるのもメディアの役割だし、そこでパフォーマンスするのがプロなんだよ。純粋に競技をするだけなら、アマチュアでいいからね。

レベルの低い質問が害悪とも言い切れない

競技じゃない部分に時間を割くのは選手にとって余計なことかもしれないけど、記者会見のコメントひとつで人気が出ることもあるし、キャリアにも影響を与える。歴史に残るような名言だって、記者会見の席で出た言葉が多い。

それに選手個人についてるスポンサーも、記者会見やメディア対応でさまざまな媒体に露出してくれることを期待して莫大な契約金を払ったり、サポートをしている。記者会見することはスポンサーに対してアピールする場にもなるんだよ。

あと、今回の問題で指摘されたのが、会見に詰めかけている記者のレベルが下がっていることだ。競技についての知識が浅かったり、そもそも試合についての質問じゃなかったりと、選手のストレスになるようなことしか質問しない記者というのは割といるんだよ。大手メディアに所属する記者といえども、誰もが大会や選手の成功を願ってるわけじゃない。なかには足を引っ張るようなヤツもいるし、そもそも競技や選手にもまったく興味がなかったりする。とにかく、なにかインパクトがあってキャッチーなコメントを引き出して、自分のメディアの見出しになればいいか、ぐらいにしか考えていない。

でも、そういうマスコミが害悪とも言い切れない。テニスのテの字も書いていない、ただ選手の発言を切り取っただけの記事を読んだ人でも、それをキッカケに競技に興味を持って、ファンになることもある。プロスポーツは知ってもらって、興味を持って、試合を見てもらうことが大事で、メディアとは切っても切り離せない関係なんだよ。だから、この問題は会見に出る出ないで解決することじゃない。

選手側、運営側それぞれの意見を聞いて、何が問題なのか、どうすれば解決していけるのかをお互いに考えていくしかない。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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