
初夏の兆しが強くなるとともに恋しくなるもの。ワタクシにとってのそれは、「清流のせせらぎ」であります。
そんな清流の涼を求めて向かった先は、群馬県桐生市を流れる桐生川。前橋駅でJR両毛線を降り、いったん改札を出て街中へ。駅前通りを歩くこと15分、前橋と桐生を繋ぐローカル線「上毛電気鉄道」が発着する、中央前橋駅に到着しました。
ここからは趣のある2両編成の電車に揺られ、歴史を感じさせる古びた踏切や上毛三山に数えられる赤城山など、変化に富んだ車窓からの景色をのんびりと楽しみます。
ただワタクシの場合、車窓から海や川(ドブも含む)が見えた瞬間に水面を凝視する傾向が子どもの頃からあるのです。今回も電車が渡良瀬川を渡る際には、橋桁周辺のいかにも魚が潜んでいそうな美しい淀みをしばし凝視。「時間があればココもいいなぁ」などと記憶に焼き付けておりました。これも性分というものでしょうか。
事前に情報収集ができるインターネットは極めて便利なツールですが、実際に出かけた道すがらで記憶に刻んだ場所へあらためて出向く。アナログではありますが、これがなかなか面白いのです。
車窓を眺めること小一時間、終点の西桐生駅に到着しました。歴史を感じさせる駅舎を出て、駅前のコンビニで渡良瀬川水系の遊漁券を購入します。今回の目的地である桐生川は、漁業権が設定されている渡良瀬川の支流に該当します。ゆえに、1日分の「日釣券」を購入したうえで竿を出すのがルールなのです。
煌めく川面にウキがスッ!
無事に遊漁券と食料を確保したらお次は路線バスに乗車。歴史ある桐生の街並みを眺めながら10分ほど揺られ、「旧女子校前」で下車して川へと向かいます。
その道すがら、何気なく歩道沿いの側溝(ドブ)を覗いたのですが、水面に影を落とした瞬間に「ピュピュピュ~ッ!」と相当数の魚が逃げ惑いました。こらえ性のないワタクシのことですから、すぐにでも竿を出したくなる光景でしたが、「いや、待て! 今日は清流の涼を満喫しに来たのではないか!」と必死にこらえます。ちゃんと記憶に刻み込みましたから、大丈夫です。
ほどなく目的の桐生川へ到着し、よさそうなポイントを探りながら流れの上へと釣り上がっていきます。初夏の日差しを受けてキラキラと輝く流れは、やはり気持ちのよいものです。

途中、堰の下にいかにも魚が溜まりそうな深みを見つけ、ニヤニヤしながら仕掛けを振り込みます。するとウキがスッと引き込まれ、「ブルブルッ!」と小気味よい手応えが続きました。掛かっていたのは、渓流釣りで定番外道とされるアブラハヤでした。
身はホクホク♪ ビールに合う
やはりこの深みに魚が溜まっていたようで、同じパターンで釣れ続く入れ食い状態を楽しみます。新緑が鮮やかな周囲の山々からは鳥のさえずりが聞こえ、清い流れに仕掛けを流せばウキが動いて小魚が釣れる。しばしの間、このぜいたくな自然時間を無心で満喫したのでありました。
このアブラハヤ、ヤマメやイワナなどを狙う渓流釣りでは邪魔者扱いされることが多く、本命として狙う人はほとんどいません。ただ、ワタクシは清流の涼を満喫しながら無心に魚と遊べれば満足ですから、むしろ大歓迎であります。

ということで、持ち帰ったアブラハヤは衣を付けたフライとなって食卓に上がりました。揚げたてを一口食べると、ホクホク&しっとりした身がなかなかに美味。骨はほぼ気にならず、川魚特有のクセも感じられません。ワカサギのフライがこれだけ定着しているのですから、コイツだって全然アリでしょう。
美味しいフライとビールを楽しみながら、上毛の清流や山々、ウキが沈むさまなどを思い返して夜は更けていきます。
「今度は車窓から見えた渡良瀬川もやってみよう!」
そんな次の楽しみに、また思いを馳せるのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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