「ゴジラ松井の巨人監督就任に障害はなくなった―」渡邉恒雄氏の逝去で長嶋茂雄“最後の願い”が実現するXデー


巨人を去った松井に対する関心も薄らいでいった。ヤンキースに移籍してから空席だった松井の背番号55は、2008年ドラフト1位の新人・大田泰示が引き継いだ。

この一件は、松井へ「もう巨人に戻ってくる居場所はない」と三くだり半を突きつけたのも同然のように感じられた。

松井がヤンキースで活躍していた時期、筆者は松井の父親・昌雄氏と東京・赤坂の料亭で話す機会があった。

その席で松井が日本へ帰るタイミングについて聞いたのだが、昌雄氏は「秀喜は頑固者で一度決めたことは曲げないんです。まあ、それにしても、これほどまでこだわるのには驚いています」と明かしている。

これを聞いた筆者は、前述したように渡邉氏が健在である限り、松井が巨人監督に就くことはないと確信したことを覚えている。

「長嶋さんが喜ぶことをしたい」

渡邉氏の訃報を受けた松井は「私のジャイアンツ在籍時にかけて頂いた激励のお言葉、メジャーリーグ移籍時に頂いたお心遣い、引退時に頂いたねぎらいのお言葉、すべてに感謝しております」とのコメントを寄せている。決して、他人の悪口を口にしない松井らしい対応だった。いずれにしても、これで監督就任への障害はなくなった。メジャー移籍から20年以上が経過し、渡邉氏へのわだかまりの記憶も遠のいたのだろう。

実際、このところの松井の言動は頑なだった以前と比べて、希望の持てるものに変わってきている。

例えば、年明けに放映されたイチローとのスペシャル対談で「10年後の自分」を聞かれ、「長嶋さんが喜ぶことをしたいなと。元気なうちに自分の元気な姿を見せたいなという気持ちはありますけどね」と答えている。

今の長嶋が松井に望むことと言えば、間違いなく巨人の監督就任だ。