メディアはほとんど報じなかったが、5月21日の衆院厚生労働委員会で、新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が重要な証言をした。
「ワクチンをやれば、すぐに下火になる。そんな幻想は抱かない方がいいと思います」
東京都の小池百合子知事が「ワクチンはゲームチェンジャーになる」と言い、菅義偉総理は「ワクチンが決め手になる」と繰り返しているから、多くの国民がワクチンさえ行き渡ればコロナと決別できると考えている。しかし、尾身会長はそんな期待を戒めたのだ。
私は、コロナ感染はすぐに下火にならないどころか、当分、続いていく可能性があると考えている。イギリスの例があるからだ。
イギリスは、5月26日現在で少なくとも1回ワクチンを受けた国民が56.5%と、先進国で最もワクチン接種が進んでいる。その結果、イギリスの1日あたりの感染者数は、1月8日の6万8053人をピークに急減し、4月10日には2584人と約26分の1にまで減少した。ところが、それ以降は横ばいがずっと続いている。5月26日の感染者数は2987人だ。
なぜ、ワクチン接種が進んでも新規感染者が横ばいなのか。実は、イギリスはワクチン接種に加えて、ロックダウンと感染が深刻な地域の全員検査を含む徹底的なPCR検査を進めてきた。4月までの感染急減の主因は、ロックダウンと大規模PCR検査の2つだったのかもしれないのだ。
ライフスタイルや社会構造を変えていく必要がある
ただ、この1カ月で確実に進んできたワクチン接種が、効果を持たない理由はいくつか考えられる。1つは、国民全員がワクチンを打つわけではないことだ。現在でもイギリスは4割以上の国民がワクチンを打っていない。未接種者は、相変わらず高い感染リスクを負っている。
もう1つの理由は変異株だ。特にイギリス型の変異株と比べて1.5倍の感染力を持つと言われるインド株が、拡大している可能性がある。さらに、ワクチンの効果の持続性に関しても、いまのところ十分な検証がなされていない。
いずれにせよ、しばらくコロナ禍が続くことを前提にして、我々のライフスタイルや社会構造を変えていく必要がある。
具体的には、ワクチン接種はインフルエンザ予防接種と同様に、毎年繰り返す。そして、PCR検査も感染リスクの高い大都市では、全員を対象に定期的に行う。PCR検査のコストは劇的に下がっているし、スポーツやエンターテインメントの業界では、すでに行われていることだから不可能ではないだろう。
そして最も重要なことは、感染拡大の起点となっている大都市の人口集中を緩和することだ。昼間の人口密度は、東京都全体が全国平均の22倍、東京都千代田区は210倍だ。これだけ密だったら感染が爆発するのは当たり前なのだ。
一極集中の緩和は、ずっと政府の掲げる重要課題だった。一極集中緩和のための首都機能移転は、すでに法律までできている。だが、現実には移転がなかなか進まない。
そこで、バブル期に大都市の地価高騰を抑制するために導入された地価税のように、大都市中心部の企業を対象に法人税の上乗せをする税制を導入したらどうだろう。思いきって税率を高くすれば、地方分散はすぐにでも進むはずだ。
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