『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』
監督・脚本/ジョージ・ギャロ
出演/ロバート・デ・ニーロ、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマン、ザック・ブラフ、エミール・ハーシュ
配給/アルバトロス・フィルム
ロバート・デ・ニーロ、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマンという、ハリウッドの3大レジェンドが嬉々として演じている、なんとも肩の力の抜けたコメディー映画。
舞台は1970年代のハリウッド。B級映画プロデューサー役のデ・ニーロが、極悪ギャング役フリーマンからの借金取り立てをかわすために、起死回生の保険金詐欺を画策。往年の西部劇スターのジョーンズを老人ホームから引っ張り出して、無理めの映画撮影に挑むというドタバタ喜劇です。
平均年齢78歳。3人揃ってアカデミー賞を受賞した重鎮だからこそ出せる軽妙な演技合戦、頻繁に繰り出される往年の映画ネタの数々…おそらくセリフの1つ1つまでシャレが効いているんでしょう。私には、あちらの人の半分も伝わらずとも、設定が面白いので十分に楽しめました。
日本でも三谷幸喜氏あたりに撮って欲しい
往年の映画界の輝きや猥雑さを知り尽くしたスターたちが、昔取った杵柄を大いに発揮するこんな映画、日本でも三谷幸喜氏あたりに撮って欲しいと思いますねぇ。最近、亡くなった田村正和さん、田中邦衛さんなどの名優たちが一線を退かず、こういう形で活躍していてくれていたらと思わずにいられません。もし今、三谷幸喜氏がリメイクするとしたら、デ・ニーロには伊東四朗、ジョーンズには山崎努、フリーマンには八名信夫かな…とキャスティングまで妄想しました。
ただ1つ、この映画で少々食い足りなく感じたのは、危険な撮影で事故死させるつもりが、図らずもジョーンズが次々とクリアして、存外いい画が撮れていくという設定。映画の中では「これでオスカーは間違いなしだ!」と盛り上がるのですが、SFXもない70年代に生身の老優が演じるとは言え、〝スタントとしてそんなにすごいか?〟というシーンばかり。逆に「オスカーなんて、こんなちょろいもんよ」と、この3人だから言えてしまえるメッセージなのかもしれません。
にしても、ネイティブアメリカン(もはやインディアンとは言えない世の中に…)が奇声を上げて馬で追いかけてくるシーンを久々に見ました。大リーグのクリーブランド・インディアンスも、インディアンスは蔑称だとの抗議を受けて来年には改名するそうです。
つまり、インディアン対開拓者という構図の西部劇は、本作のような過去作へのオマージュという手法以外、消えていく運命に…。今や諸般の事情で見られなくなったものへのノスタルジーが、かの国でもあるのかと思った次第です。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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