現在放送されているNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一をテーマとした本を紹介したい。
『渋沢栄一と岩崎弥太郎 日本の資本主義を築いた両雄の経営哲学』(幻冬舎新書/税込990円)だ。著者はテレビでもお馴染みの歴史作家・河合敦氏。
渋沢栄一は「日本資本主義の父」と呼ばれ、約500に及ぶ会社の設立に関わった。その中には、現在も躍進し続ける企業が少なくない。一方の岩崎弥太郎は三菱の創業者。土佐藩出身で、幕末には坂本龍馬とも交流があった。
明治初期、実業家として名を馳せ、経済界の重鎮として活躍した2人だが、志は極端すぎるほど異なっていた。
激動の時代を背景にした男の生き方の違い
公益を重視して次々と株式会社を立ち上げる渋沢。ワンマン経営者として三菱商会を大企業に押し上げる岩崎。関わりも薄くはなかったが、やがて大激論の末に決別する。理念が違いすぎて、歩み寄ることができなかったのだ。そして、終生のライバルとして、激烈な経済戦争を繰り広げる。
渋沢は農民出身、岩崎は土佐の地下(じげ)浪人だった。地下浪人とは武士の身分は持つが、実質は農民に等しい。特権階級だった武士ではない両名が、真逆の経営者となったのは、なぜなのか?
著者は、どちらが理想の経営者なのかを問うのではなく、幕末~明治という激動の時代を背景にした男の生き方の違いをひもとく。経営者といってもこれほどの違いが出るのだ。どちらに思い入れが強いか、読む人によっても考えが分かれるだろう。さて読者貴兄はどっちだろうか。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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