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蝶野正洋『黒の履歴書』~“我慢比べ”が続く新型コロナ禍

蝶野正洋『黒の履歴書』~“我慢比べ”が続く新型コロナ禍
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web 

スポーツ界で不祥事というか、夜の街を出歩いていたことがバレて追い込まれる事例が続いている。

野球界では、元ロッテの清田育宏選手。昨年9月末に、新型コロナ対策として球団が「部外者との会食禁止」とのルールを設けていたのにもかかわらず、女性と密会していたことが発覚して、無期限謹慎処分を受けていた。5月にその処分が解除されたのだが、直後に30代女性との不倫デートが発覚。球団が決然とした処分を下し、清田選手は契約解除となった。

そして相撲界では、大関の朝乃山だ。緊急事態宣言が出ている中、神楽坂のキャバクラに通っていたことが『週刊文春』にスッパ抜かれた。これも日本相撲協会が定めたコロナ感染対策のルール違反となる。

朝乃山関がよくなかったのは、当初は「事実無根」と否定したことだ。この虚偽報告はコロナ違反よりも罪が重い。夏場所には出続けて、勝ち越しを決めてから認めるつもりだったのかもしれないけど、結果的には12日目に休場して負け越し。最終的な処分はまだ出ていない(6月2日現在)が、重いものになると思う。

緊急事態宣言下とはいえ、やっているお店はあるし、一般の人たちには飲みに行ってる人もいる。だから朝乃山関は「なんで俺たちだけ我慢しなくちゃいけないんだ」って思っていたのかもしれない。でも、やっぱりプロは制限があるものだし、団体で動いているんだから、自分一人の責任では済まないんだよ。

ただ、今回はそういう真っ当なこと以前に、彼らは脇が甘すぎるとも思う。視野が狭いというか、メディア側の状況が分かっていないんだよ。

自然災害とは違い新型コロナはゴールが見えない

週刊誌にしてみれば、これまで情報収集をしてスキャンダルのネタを仕入れて、さらに張り込みをして現場を押さえて記事にしていた。裏取りもするため、記事になるまでに何カ月もかかる。それがコロナ禍では、有名人が夜の街で遊んで酒を飲んでいるだけでも記事になってしまうんだよ。

しかも、最近は記事になる出来事が少なく、週刊誌も誌面を埋めるのに苦労している。そんな時にスポーツ選手のキャバクラ通いなんてネタが入ったら、いつもより大きく報道されてしまう。だから、有名人が出歩くことのリスクの高さは、ちょっと考えればすぐに分かったはずだ。

ただ、数年間みんなで頑張って危機を乗り越えようという気持ちになる自然災害とは違い、新型コロナはゴールが見えない。そのために〝我慢比べ〟が続いていて、耐えきれなくなるのも分からなくはない。

これは東京オリンピックでも同じだ。世論調査では中止の声が高まっているようだが、決断した組織が全責任を負わされてしまう。だから逆風が吹いていてもIOC、日本政府、東京都は中止を宣言しない。水の中に潜って息を止めている状態で、我慢できずに水面に出たやつが負けというチキンレースなんだよ。

同じようなことは、日本のあらゆる場所で起こっている。でも、ゴールさえ分かればみんな耐えられると思うし、夜の街にも行かなくなる。

そのゴールが〝ワクチン接種〟ということなら早く進めるべきだし、そこに一丸となって進むような雰囲気になってほしい。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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