江本孟紀「ベンチがアホやから!」発言の真相 阪神タイガース番記者がベンチ裏事件簿の取材メモを初公開

伏線はブレイザーから中西太に代わった監督交代劇

伏線は幾つもあったが、大きかったのは前年5位の責任を取って辞任したブレイザーから中西太に代わった監督交代劇だ。

ブレイザーは江本の要望に小津球団社長が応えて招聘されていたが、わずか約1年でクビである。

江本は「これで阪神再建のチャンスが消えた」と失望感を露わにしていた。

新監督・中西との関係も良くなかった。アホ発言の引き金になった日の試合でも、ベンチの方針が定まらず、サインを待つうちに失点してしまっていた。

断っておくが、江本は中西を人間的に嫌っていたわけではない。あくまで戦術や起用法が理にかなっていないことに怒っていたのだ。

江本は直情型の性格に見えるが、野球に関しては南海時代にブレイザーや野村克也の薫陶を受けた理論派で、きちんと話せば分かる男だった。

後に江本はこう話している。

「もし、ブレイザーが監督を辞めずに阪神にいてくれたら私の野球人生も違っていたかもしれません。少なくともあの発言はなかったし、阪神で優勝していたかもしれませんね」

ただし、筆者はあの「アホ発言」がなくても江本はいずれ早い段階で現役を引退していたと思っている。当時の江本は心臓に深刻な病気を抱えていたためだ。