「家城茜役は私にとって宝物です」 特撮映画『ゴジラ×メカゴジラ』が俳優人生のターニングポイントに【釈由美子 インタビュー】

女優・釈由美子が出演しているアメリカ映画『IKÉ BOYS イケボーイズ』が、6月14日から全国公開される。

オクラホマを舞台に、日本の特撮やアニメ好きの高校生たちが特殊能力を身に付け大活躍するファンタジー作品で、彼女はキーパーソンとして登場。その端正な顔立ちとは裏腹に、思いもよらぬキャラクターを見事に演じ切っている釈に、映画の舞台裏を聞いた。

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――今作のメガホンを取ったエリック・マキーバー監督は、釈さんが主演した『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年公開)を見て、直々に出演を依頼したそうですね。

釈由美子(以下、釈)「そうなんです。わざわざDVDを持ってきて、『ぜひ、出演してほしい』と仰っていただき、うれしかったです。

――釈さん自身、『ゴジラ×メカゴジラ』は俳優生活のターニングポイントになった作品だと仰っていましたね。

「おばあちゃんになっても自慢できるかな(笑)」

「あの家城茜役は私にとって宝物です。特撮ヒロインを特集したテレビの特番で十数年ぶりに撮影時の戦闘服に袖を通したのですが、感無量でした。ゴジラは世界的にも有名ですし、この役はおばあちゃんになっても自慢できるかな(笑)」

――「行くよ、機龍!」という名セリフもあって、歴代の特撮ヒロインの人気投票でも上位に入っています。

「うれしいですね。7歳の息子もゴジラシリーズが大好きで、私が出ているところを見ては“あっ、ママだ!”と言ったり、ラストシーンを見ては泣いたりしています」

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――監督は日本の特撮が好きなあまり、早稲田大学に留学していますが、日本語は上手なのですか。

「ペラペラです。実は、家族ぐるみの仲良しなので、日本に来たときは、息子とゴジラのフィギュアで一緒に遊んでいます(笑)」

――今作では、出演する俳優陣も個性派ぞろい。釈さんは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『タイタニック』に出演されている俳優のビリー・ゼインさんの妻役を演じていますが、共演してみて、いかがでしたか? ビリーさんが演じるニュートは、空手教室の先生という役柄ですが、どこか表情に陰りがありますね。

「役柄からも当然そうなりますよね。海軍で日本にやって来て、人生観が変わったというように、何か重いものを背負って生きてきた人物の設定ですから」

「ミキは好奇心が旺盛な女の子なんでしょうね」

――また、日本から留学してきたミキ役の比嘉クリスティーナさんはネイティブ・アメリカンに興味を持っている女の子という設定で、ちょっとユニークでした。

「ミキは好奇心が旺盛な女の子なんでしょうね。異文化に触れたいという思いで、アメリカ原住民の保留地になっているオクラホマにやって来ました」

――釈さんはミキの相談に乗ったりもしますが、決して善人というわけではない。ネタバレになるので、詳しくは言えませんが。

「これまでにも悪役は結構やっています。今回は神との関わりということもあるので、善悪を問うのは微妙なところではありますが」

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『IKÉ BOYS イケボーイズ』の舞台であるオクラホマは、エリック・マキーバー監督の出身地。高校生のショーンとヴィクラム、そしてミキは、レアな日本のアニメを見たことをきっかけに特殊能力を身につけてしまう。

その後、いにしえの神々を蘇らせようとする闇の勢力の陰謀に巻き込まれていく物語だ。

――ノストラダムスの大予言が騒がれた1999年の出来事なので、衣装や髪型などには、気を使われたのでしょうか。

「衣装さん任せでしたので、ほとんどありませんでしたね。髪を少し切ったことぐらいでしょうか」

撮影中に襲ったコロナパンデミック

――2020年、新型コロナウイルスのパンデミックの前後にアメリカと日本で撮られたそうですが、苦労したことはありましたか。

「トランプ政権のときで、ビザを取るのが結構大変でした。それとコロナ禍の影響で、向こうのクルーが日本に来るのも簡単ではありませんでした。結局、予定の半分くらいしか来られなくて…。それだけに、こうして公開にまで至ったのはうれしいです」

――学園生活を含め、高校生の日常がしっかりと描かれているのがいいですね。

「あの学校は、監督の母校です。だから、当時の思い出とか経験したことが役に立っているんでしょうね。この作品は、監督の少年時代の妄想がベースになっているのでしょう」

――そんな監督のこだわりのエピソードはありますか。

「ビリーさんがショーン役のクイン・ロードに空手を教えるシーンは、時間をかけて何度も撮り直していましたね。そのおかげで、リアルでとてもいいシーンになっています」

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――特に気に入っているシーンを教えてください。

「カルト集団がミキを木に磔にして、『いにしえの神々を!』と言って処罰しようとする大草原のシーンが、オクラホマの自然の雄大さを感じられて、最も印象に残っています。

それと、あのシーンの撮影中、偶然にも遠くからコヨーテの“ワオォ~”という鳴き声が聴こえてきたんです。自然に起きたことが効果音になっていて印象的でした。

――集団の中にはヴィクラムと仲がいい女子高生がいて戦いに参戦するなど、とにかく展開に意外性がある。

「特撮ものは何といっても戦闘シーンが売り物です。その上で、監督ならではの、全く新しい世界観が描かれています。何より特筆すべきは、映像がキレイなこと。日本のものとは、ちょっと違っています」

日本の特撮は「今後も大事にしていきたいですね」

――ウルトラマンごっこをしたりするシーンが出てくるなど、日本のカルチャーへオマージュを捧げているシーンが、随所に見受けられます。

「うれしいですよね。特撮やアニメが日本の誇らしい文化として認められ、しっかり定着している証しです。今後も大事にしていきたいですね」

釈は2021年に日本公開されたカナダ映画『ロックダウン・ホテル 死・霊・感・染』で海外作品に初参加を果たし、今回の出演が2作目となる。世界を股にかけて活躍する彼女に、現在の生活や今後について語っていただいた。

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――ゴールデンウイークは愛車で息子さんと長野県の蓼科高原へ行かれたそうですね。

「そうです。そこでオートキャンプした翌日には、車山で息子と一緒にハイキングをしました。とても快適な日々でしたね」

――将来、息子さんが芸能人になりたいと言われたら、どうしますか。

「なりたいとか、全く思っていないようです。それに、そんなに甘い世界ではありませんしね」

――釈さんといえば、登山以外にも、温泉ソムリエ、古武道(十二騎神道流二段)と多趣味ですね。

「もともと、いろんなことに手を出すのが好きでしたから。でも、今やっているのは山登りがほとんど。運動不足を補おうとジムに通ったりもしましたが、結局、三日坊主に終わってしまいました(笑)。今度、海外の山にも登ろうと思っています」

写真集オファーは「来ないです、来ないです。本当に(笑)」

――釈さんといえば、2012年に出した『I am 釈由美子写真集』が大ヒットしましたが、それ以来、発表されていません。もしかして、密かにオファーがあるのでは?

「来ないです、来ないです。本当に(笑)。今は全く考えていないですね」

――今後の女優活動ですが、やってみたい役などはありますか。

「やはり、母親役ですかね。それと、アクションを生かしたものはやってみたいです」

――釈さんは、時代もののアクションもできるので、とても楽しみです。

「チャンスがあれば、トライするつもりです。もちろん、特撮ものも忘れてはいません」

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

「『IKÉ BOYS イケボーイズ』のオープニングには、私だけでなくマキーバー監督も来日して舞台挨拶をします。ぜひ、見に来てください」

釈由美子(しゃく・ゆみこ) 1978年6月12日生まれ。東京都出身。1997年に芸能界デビュー。主演映画『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)のほか、主演ドラマ『スカイハイ』(2003、2004年/テレビ朝日系)など、出演作は100本を超える。2015年10月に結婚。翌年6月に男児を出産した。

『IKÉ BOYS イケボーイズ』 監督・脚本:エリック・マキーバー、出演:クイン・ロード、ローナック・ガンディー、比嘉クリスティーナ、ビリー・ゼイン、釈由美子 6月14日(金)TOHOシネマズ新宿ほか全国公開 (C)Iké Boys MOVIE, LLC

(取材・構成/若月祐二、撮影/河村正和)