【中日】常勝ホークスを築いた工藤公康新監督の「勝負師の流儀」… 3人の証言者が明かす情報戦・ビジネス感覚・育成システムの真実

工藤公康氏

優勝請負人として工藤公康氏(63)が中日監督に就任した。中日は6年連続Bクラス、うち最下位は4度で今年も6位だった。常勝軍団のホークスを率いた名将は、どうチームを立て直すのか。同氏の著書もあるスポーツジャーナリストの吉見健明氏が特別寄稿した!

今オフのプロ野球ストーブリーグにおいて最大のニュースの1つとなったのが、工藤公康の中日ドラゴンズ新監督就任である。現役時代は西武ライオンズ、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズの4球団でプレー。監督としても福岡ソフトバンクホークスを5度の日本一に導いた名将である。愛知県名古屋市出身の工藤が、満持して故郷に錦を飾ることになったわけだ。工藤が中日でどんな野球を見せるのか興味は尽きないが、筆者はこれまで何度も工藤の「野球観」について取材をしてきた。本稿では、その中から特に象徴的だった3人の球界関係者の証言を紹介したい。

「味方を騙す徹底した情報戦」と「120%の修正力」…柴田猛氏が明かす衝撃の86球


工藤の現役時代に、その野球IQの高さを解説してくれたのは、柴田猛氏だ。相手のクセやサイン解明のプロフェッショナルで、7球団を渡り歩いた伝説のスコアラーだ。象徴的だったのが2000年に長嶋茂雄率いる巨人と王貞治率いるダイエーによる「世紀のON対決」となった日本シリーズで、巨人の工藤は初戦に先発している。

柴田氏は、このシリーズでも長嶋巨人の極秘情報収集を担当していた。巨人は初戦から2連敗を喫したものの、その後、4連勝して日本一となっており、そこには柴田氏の情報が大きな働きをしたといわれている。その柴田氏を長嶋巨人に紹介したのが筆者だったという経緯もあって、後に柴田氏が工藤の86球を徹底分析した『ON対決初戦 工藤公康の86球にこめた戦い!』(三省堂)という単行本を筆者は出版した。

工藤はこの第1戦で敗れているのだが、それでも柴田氏は工藤が持つ「2つの恐るべき凄み」を私に語ってくれた。1つ目は味方すら欺く徹底した情報戦だ。

「あの時、実は工藤は右ふくらはぎを痛めていたんです。普通なら絶対に隠すところですが、彼はわざわざシリーズ前に宮崎まで行って調整しながら、『投げられない』というポーズをダイエー側に見せつけた。さらに、同僚の上原浩治にまで『俺は投げられないから用意しておけ』と吹き込み、味方すら完全に騙したんです。工藤本人は『敵を騙すには、まず味方から騙す』と言い放ち、ケロッとした顔で初戦の先発マウンドに上がっていました」

2つ目は、驚異的な修正能力と後進への伝達能力だ。

「私が調べ上げた『ダイエーはストレートを狙ってきている』という情報を生かし、工藤は直球を遊び球にして、スライダーを軸にダイエー打線を翻弄しました。それだけでなく、マウンドを降りた後は、先発陣(第4戦)の斎藤雅樹に『低めのスライダーで裏をかくと効果がある』とすぐ伝授した。自分が負けても、相手のクセを瞬時に見抜き、次の勝負に生かす。彼は私の提供した情報を120%フル活用してくれたんです」

工藤は、ただの理論派ではない。情報を集め、相手の心理を読み、自分に有利な状況を作る。ダイエー時代には、「本拠地の広い球場で投げさせてほしい」と王監督に直訴し、意見が衝突したこともあったというが、そんなしたたかさこそが、工藤の勝負師としての一面なのだ。

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