【中日】常勝ホークスを築いた工藤公康新監督の「勝負師の流儀」… 3人の証言者が明かす情報戦・ビジネス感覚・育成システムの真実

勝負に投資を求める工藤の一貫した流儀

「三軍制度の設置」
「最新鋭のトレーニング器具を完備した専用ルームの創設」
「室内練習場の改修」

加えて工藤自身の「べらぼうな額の契約金」である。

当時のDeNAには、工藤の要求をすべて受け入れるだけの資金力はなかったのだ。その後、工藤はソフトバンクの監督に就任するわけだが、その際も球団に対して「投手の肩や肘の寿命を調べる最新の医療・測定器具」の導入を要求し、実際に設置させている。

「選手の合理的な育成システムを作り上げること。そして、選手がいかに長く健康にプレーできる環境を整えるかは、球団として不可欠な条件である」

これは工藤が公言している持論だが、事実、ソフトバンクでは早くから三軍制度や最新のスポーツ科学を駆使し、"お化けフォーク"千賀滉大や"キャノン砲"甲斐拓也といった育成出身の大スターを次々と生み出した。では、翻って中日ドラゴンズはどうだろう。徹底した合理主義者で、勝つためなら球団に対しても一切の妥妥を許さない工藤が首を縦に振ったのだ。中日球団は、工藤が提示したであろう要求を丸呑みする覚悟を決めたのだと推測する。

事実、中日は早くもドジャースで有望株だった大砲のライアン・ウォード選手を電撃獲得している。これだけを見ても、中日の本気度が窺える。工藤は選手時代から、勝つための条件を自分で考え、必要なものを求めてきた。情報戦では相手の裏をかき、編成のプロたちと縁を結び、指導者としては施設やデータの重要性を説く。まさに「研球」の鬼である。

カネも設備も、使えば必ず勝てるというものではないが、勝つために何が必要かを考え、投資を求める姿勢は、工藤の一貫した流儀なのだろう。故郷に帰った名将の本当の勝負は、これから始まる。

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【吉見健明】

1946年生まれ。スポーツニッポン新聞社大阪本社報道部(プロ野球担当&副部長)を経てフリーに。法政一高で田淵幸一と正捕手を争い、法大野球部では田淵、山本浩二らと苦楽を共にした。スポニチ時代は"南海・野村監督解任"などスクープを連発した名物記者。『参謀』(森繁和著、講談社)プロデュース。著書多数。