新内閣支持率わずか20%「冷えたピザ」と揶揄された小渕恵三のしたたかな政治家の顔

勝手に机の上にある印鑑を押して引き揚げた

小渕は出発前に、当時、初当選ながら自民党の青年局長ポストにあった竹下に面会を求め、党本部の青年局長室を訪ねた。

海外で何か困ったことがあったとき、「小渕君をよろしく」という一筆を持って在外公館を訪ねれば、それなりに手を差し伸べてくれるだろうという腹積もりで、その頃、自民党代議士の一筆は、なかなか“価値”があったのである。

ところが、ちょうど竹下は不在だった。ここで小渕のしたたかさ、秘めた剛腕が顔を出した。

小渕は、あらかじめ「小渕恵三を自民党青年局代表として派遣する。青年局長竹下登」と書いた紙を自ら持ってきていたが、勝手に竹下の机の上にある印鑑をその紙に押し、引き揚げてきたのである。

まかり間違えば、公印を勝手に使ったのだから、大問題にもなりかねなかったのだ。

ここでは竹下と小渕の信頼関係の深さも垣間見えるが、実際の小渕が、こうした挙に出る度胸を密かに持ち合わせていた人物だったことが知れる。

政権半ば以降、小渕は一変したように辣腕を発揮し始めた。大胆な決断力を、次々と打ち出してくるのである。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」9月25日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。