阪神の「ミスター」は名誉であり呪いだった 2代目ミスタータイガース村山実の実像

阪神甲子園球場(C)週刊実話Web
2年ぶり7度目のリーグ優勝へまっしぐらの阪神。チーム一丸となってのVだが、どこか物足りないのは掛布以降、「ミスタータイガース」と呼ばれる超スター選手がいないこと。2~4代目のミスタータイガースの実像を元スポニチ担当記者・吉見健明氏が初めて明かす。

今季はマジック点灯でリーグ優勝目前!

藤川球児新監督の下、熾烈な優勝争いを繰り広げてきた今年の阪神タイガース。7月には球団タイ記録(1950年の2リーグ制以降)となる11連勝を記録し、早くもマジックが点灯するほどの独走で、リーグ優勝は目前に迫っている。

確かに、近年の阪神は強くなった。ただ、その一方でどこか寂しさも感じている。それはこのチームに「ミスタータイガース」と呼べる存在が不在であるからだ。

かつてはそれぞれの時代に「ミスター」が確かにいた。彼らは単に成績が優れているだけでなく、そのプレーでファンを熱狂させ、阪神の、ひいてはプロ野球界全体の象徴となっていた。

実は、もともと「ミスター」の称号を生み出したのは阪神だ。現在では故・長嶋茂雄の「ミスタージャイアンツ」「ミスタープロ野球」の呼び名が定着しているが、プロ野球界で最初にミスターと呼ばれ始めたのは阪神の藤村富美男である。

「物干し竿」バットで豪快なホームランを打ちまくった阪神のダイナマイト打線の4番打者で、長嶋も少年時代にこの藤村を見て憧れていたという。

面白いのは、読売巨人軍におけるミスターは長嶋ただ1人だが、阪神では藤村から村山実、田淵幸一、掛布雅之へと受け継がれていった。

そして阪神に限っては、この「ミスター」の称号は名誉であり誇りである一方、時に選手の野球人生を狂わせる「呪い」でもあった。

筆者は長年にわたりプロ野球界を取材してきた。

残念ながら初代・藤村との接点はなかったが、その後の3人とは取材を通じて深く関わってきた。

そんな歴代ミスターの華々しい活躍の裏で何が起きていたのか、この目で見てきたミスタータイガースの“真実の肖像”を描いていく。

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