小泉進次郎vs下位連合 “五長老”牛耳る刷新感なき自民党総裁選

岸田首相に安倍派は恨み骨髄

石破氏は7月上旬、菅氏に近い武田良太元総務相の仲介で菅氏と会食した際、出馬への意欲を伝えず、頭を下げることもなかった。

しかも、皇族数の減少問題をめぐり、「女系天皇も選択肢」との発言を繰り返していたため、菅氏は「これでは保守系が離れる」と激怒し、武田氏に、石破氏の勉強会に参加させていた旧二階派の中堅・若手を引かせたという。

だが、麻生氏からすれば、石破氏から離れた保守系議員を取り込む算段が首相側にあるとは思えなかった。

ここが弱点なのは岸田首相も分かっていた。3年前の前回総裁選では、決選投票で安倍派の全面支援を得られたが、今回は安倍晋三元首相が世を去っている上に、首相が派閥解散を表明し、安倍派を解消に追い込んだことが尾を引いていた。

6月以降、首相が麻生氏と会談を重ねる中で、再三にわたり指摘されていたことだった。一方で麻生氏は「憲法改正に道筋を付けるべき」との助言もしていた。

そこで首相は、党憲法改正実現本部の古屋圭司本部長に議論の加速化を指示。8月7日の本部会合に自ら出席し、憲法9条改正も最初の国会発議に加えるべきだと踏み込んだ。

だが、成果は芳しくなかった。首相はお盆前の9日夜、マスコミに気付かれないように腹心の木原誠二幹事長代理を公邸に呼び、総裁選の分析をした。

勝敗を決めるのは1回目の投票ではない。上位2人で計414票を争う決選投票だ。ここで国会議員票367票のうち200票を取れば、残りの地方票が振るわなくても当選の可能性が高まる。

しかし、事情に詳しい政府関係者によると「旧安倍派から来そうなのは、たったの10人」だったという。麻生派の支持があっても、合計で150票以上はどうやっても積めなかった。

 「ここが潮時だな」

一縷の望みが潰えた首相がそうつぶやき、その場で木原氏に総裁選不出馬表明の記者会見の段取りを整えるよう指示したのだ。