「力士は男らしく我慢強く」元大関・豪栄道 武隈親方インタビュー

――指導者である現在は、そうした怪我や異変にいち早く気づいてあげるのも大切な役割。決して弱みを見せない力士だった現役時代とは対照的ですね。

武隈 そうですね。あまりにも痛そうにしている場合は、僕から言って止めさせることもある。そこは毎日、稽古場で見ている自分が客観的に見極めてやらないと、とは思っています。かと言って、ちょっと痛いぐらいで休んでもらっても困るんですけどね(笑)。

――若い弟子たちとは、やはりジェネレーションギャップを感じます?

武隈 今の若い子たちは、あんまり怒られ慣れていないので、声のかけ方ひとつにしても、やっぱり気はつかいます。頭ごなしに怒鳴ったり、けなしたりせず、相手が納得できる言葉でいかにやる気を引き出すか。今後はそんな姿勢も大事になってくるのかな、と。もっとも、1人ひとり性格も違うので、「これ!」という答えはないですけど。

――親方としてのビジョンなどはすでに明確ですか? まさに『相撲道』は映画のタイトルでもありますが。

武隈 よくある「相撲とは何々である」みたいな格言めいたものは特に持っていないので、すぐにはちょっと出てこないですけど、僕にとっての相撲は、物心ついたときからずっと、自分のライフスタイルの中心にあったもの。男らしく、我慢強い、です。いつの時代も力士にはそうあってほしい、と個人的には思います。

稀勢の里や栃煌山“花のロクイチ組”と切磋琢磨

――確かに現役時代の親方は、まさにそんなイメージ。そこには、ある種の美学もあったわけですね。

武隈 最近、横綱や大関に勝ったときのインタビューで、ヘラヘラしてるのが多いじゃないですか。ああいうのはあんまり好きじゃないんです。もちろん、時代背景もあるから、「昔のように」とまでは言うつもりもないですけど、日頃のすごし方も含めて、キチッとしてほしい、というのはありますね。まぁ、ウチにはそんなヘラヘラしたのは、いないですけども(笑)。

――ところで、親方は〝花のロクイチ組〟と呼ばれた黄金世代の1人。そうした同級生たちとの切磋琢磨は力になりました?

武隈 やっぱり燃えましたよね。今の荒磯親方(元横綱・稀勢の里)もそうですし、清見潟親方(元関脇・栃煌山)や德勝龍関なんかは小学校の頃から対戦してきた間柄。なので、なおさら「負けられない」って気持ちは強かったです。

――同部屋の妙義龍関とは埼玉栄高校時代の同級生でもある。劇中でも「一緒に上京した」エピソードが語られていましたよね。

武隈 彼は大卒なので、入門は僕のほうが先だったんですけど、競い合える相手が身近にいるっていうのは、自分にとってもすごくありがたかったです。昔、十両だった彼が膝の怪我で3場所連続で休んだことがあってね。そこから復帰して1年ぐらいで一気に番付も抜かれてしまった。僕が大関に上がれたのは、そこで彼が火をつけてくれたおかげだと思ってます。