「力士は男らしく我慢強く」元大関・豪栄道 武隈親方インタビュー

ドキュメンタリー映画『相撲道~サムライを継ぐ者たち~』が、このほどついに解禁。劇中でクローズアップされる〝主役〟の一人、元大関・豪栄道、武隈親方が本紙の取材にリモートで応じてくれた。

――まずは完成した映画を実際にご覧になって、ご自身ではどんな感想を?

武隈 大相撲の魅力が詰まった素晴らしい作品になっていると思います。稽古風景なんかは見てもらう機会も普段はなかなかないですし、僕らがどんな稽古をして、どんなふうに日々をすごしているかは、あまり一般の人にも知られていない。そういう日頃の部分を、ぜひ、映画館で感じてもらえたらうれしいです。

――カメラが密着していた当時は現役の大関。それから1年あまりで、ご自身や相撲界を取り巻く情勢も激変したかと思います。そこでの戸惑いなどは?

武隈 辞めると決めた時点で気持ち的には、ほぼ切り替わっていたので、自分自身がどうこうというのはなかったですね。ただ、本場所で自分が勝つことだけを考えていればよかった現役のときと違って、今は部屋付きの親方として、若い子らをどうやって強くするかを考えなきゃいけない立場。その優先順位の違いはやっぱりかなり大きいです。引退してからは、生活スタイルもそれまでとはガラッと変わりましたしね。

――出稽古が禁止になるなど、何かと制約の多いコロナ禍での指導には、やりづらさなども感じました?

武隈 場所前の出稽古は特に、自分の調子を確かめたり、苦手克服のために相手の胸を借りに行ったりもできる大事な稽古の一つ。それが満足にできない現状は、すごく気の毒に思います。幸いにもウチの部屋にはけっこう人数がいるので、稽古自体はこれまで通りにできてはいますけど。

テレビで見る他の力士の取組は歯がゆかった

――ご自身の断髪式もコロナの影響で再延期に。報道では「もう慣れた」ともおっしゃっていましたが。

武隈 まぁ、こればっかりは世界的にも大変な状況ですから、致し方ない。もちろん、個人的にも早くやれたらとは思いますけど、そのあたりは割り切ってます。できないのは何も、僕1人じゃないですしね。

――劇中では、怪我での休場を余儀なくされた一昨年の秋から冬にかけても、ずっとカメラが密着していましたよね。思う結果が得られない時期のモチベーションはどのように維持を?

武隈 してしまった怪我をナシにはできないので、「これでもうダメだ」みたいなことは考えずに、とにかく前向きにやる。どうやって治して、いい状態にまで持っていくか、ただそれだけを考えて、治療やトレーニングをしてましたね。

――他の力士たちの取組などもご覧に?

武隈 テレビで観てましたよ。でもまぁ、自分がその時間にテレビで相撲を観ているなんていうのは、本来だったらありえないことなので、冷静に観てはいるけど、一方では当然、歯がゆさもあった。そんな感じですごしてましたね。