缶チューハイにも飛び火か ビール大手4社のカルテル疑惑、公取委が一斉値上げの経緯を調査

「RTD」も一斉値上げ…調査は拡大か

ただ、疑惑はビールだけにとどまらない可能性がある。共同通信によると、4社は缶チューハイなどの「RTD」も、’22年10月と’25年4月に一斉に値上げしていた。ビール類とRTDの営業活動を同じ部署が担っていた社もあるといい、公取委は疑惑との関連を慎重に調べるという。

日本経済新聞は、消費者や飲食店から憤りの声が上がったと伝えている。

「ビール市場の縮小に加え、原料の大麦やアルミ缶などの原価が上がり、利益を維持するために価格カルテルに走った可能性があるが、許し難い行為。スーパーなどの小売店や居酒屋、消費者の間でも怒りの声が上がっていますよ」(ビール業界に詳しい関係者)

刑事告発なら法人に罰金最大5億円

公取委の価格カルテルの調査には、立ち入り検査で証拠を集め、課徴金納付命令や排除措置命令などの行政処分につなげる「行政調査」がある。一方、今回の「犯則調査」は、裁判所の令状で強制的な捜索や差し押さえができ、証拠分析や関係者の事情聴取を経て検察庁に告発、起訴されれば刑事責任に問われる可能性がある点が大きく異なる。

違反が認定されれば、対象商品の売上額などを基に課徴金が算定される。算定率は業種や規模で異なるが、大企業の製造業は原則10%で、算定期間は調査開始日から最長10年さかのぼる。これとは別に、刑事告発を経て起訴され有罪となれば、法人には5億円以下の罰金、個人には5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金が科される可能性がある。

価格カルテル等の強制調査・告発ができるようになったのは’06年に施行された改正独禁法からで、公取委は告発の方針で、対象を「国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案」と定義している。

犯則調査権限の行使は、’25年9月の軽油カルテル事件以来だ。この事件では今年4月、公取委が石油販売5社を刑事告発し、東京地検特捜部が起訴した。一方、価格調整を担った個人の告発は見送られており、ビール4社でも法人だけにとどまるのか、個人まで及ぶのかが焦点となりそうだ。東京五輪談合事件やリニア中央新幹線談合でも、犯則調査権に基づく強制調査が行われている。

公取委の岩成博夫事務総長は、強制調査が入った直後の10月7日の記者会見で、コスト上昇分の価格反映そのものは問題視していないとしたうえで、こう述べている。

「価格というのは重要な競争手段なわけで、コストが上昇する中であったとしても、価格設定というのは、それぞれの事業者において、それぞれのコストであるとか事業戦略などを踏まえ、それぞれの事業者が独立して行う必要があると考えております」