「政治の仕組みも、どの政党がどういう政党かもよく知らん」横井庄一が参院選に出馬した意外な顛末【怪人/快人伝 第9回】

横井庄一(C)週刊実話WEB

永田町取材歴50年超の政治評論家・小林吉弥氏が実際に会った傑物たちの知られざる素顔を初公開。今回は横井庄一(下)をお届けする。

横井庄一を驚かせた戦後の変貌

太平洋戦争の敗戦から残留日本兵としてグアム島で28年間の潜伏生活を送り、昭和47(1972)年2月2日に帰還した横井庄一にとって、戦後の日本は何もかもが変わってしまい、まさに「今浦島」として驚きの連続だったようだ。

例えば、横井は帰国から約9カ月後に『文藝春秋』誌上で、次のように明かしている。

「名古屋の街は、天と地ほど変わっとったなあ。〈中略〉昔は大きい店だと(見張りが)いたけど、小さい店には見張りが少なかったでしょ。今は小さいとこでも、ちゃんと見張りがおるですよ。わしは万引きが多いんじゃないかと思うんですけどね」

「今はバスにも、マンガンとかマンナンとかいうやつがあるでしょ。え? ああワンマンか。そのワンマンの意味が、わしにはわからん。〈中略〉ギャバレーだとかキャバレーだとかっていうでしょ。夜はギャバとかキャバとか、どっちがどうだったか、さっぱり見当がつかない。昔はみんな酒場ですよ」

「まったく、カネの価値を覚えるのにも一苦労だわ。日本に帰るとき、グアムで天皇陛下の写真が載っとる本をもらったんだわ。そしたら、定価が何百何十円と『円』だけ書いてあって、そこで『銭』がなくなっちまったんかと感づいた」

「(記者会見で対面した記者たちは)全部着とるものが派手でしょ。言葉もはっきりわからんですよ、言い方が。だから、日本人だかアメリカ人だかわからん。日本人の格好をした本当の日本人が、どっかにいるはずだと。わしは、国防色を着ている日本人しか知らなかったからね」

「(新聞記者の)頭も、昔ならキチッと分けたりしておったでしょ。ところが今は、ざんぎり頭や、長いのや、髭ボーボーや。そこへもってきて新聞記者だけじゃなく、なんかごってり塗った女子が、どっさり入ってきとるしね(注・女子の派手な芸能レポーターあたりを指しているのか)。日本人だか、西洋人だか、グアム島の人間だか全然わからんわ。〈中略〉往生こいたね」

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