横綱大の里「優勝は考えない」の裏に見える一人横綱の完成形と死角

単独トップで秋場所制覇か!?

横綱大の里が、大相撲秋場所10日目に小結伯乃富士を下し、9勝1敗として単独トップを守った。ここまで2敗以下を大きく引き離しているわけではない。それでも本人は取材に「優勝は一切考えない」と言い切った。この言葉、額面通りに受け取っていいのだろうか。

スポーツ紙デスクの一人は「意識していないのではなく、意識する必要がないところまで自分の相撲を仕上げてきたということ」と読み解く。昨年までの大の里と、今場所の大の里は何が違うのか――単に「勝っている」という結果だけでなく、勝ち方そのものが変質してきているからだ。

「一人横綱」という孤独な重責

大の里は横綱昇進から8場所目にして、今場所初めて初日から「一人横綱」として土俵に上がり続けている。同格の横綱が休場や不在で他にいない状態は、相撲内容以上に精神面での負荷が大きいとされる立場だ。

それでも9勝1敗という星取りを保っている点は、単なる好成績以上の意味を持つ。9日目には初顔合わせの相手の強い当たりを慌てず左にいなして引き落とし、10日目も落ち着いた内容で伯乃富士を退けた。

力任せに押し切る一番ではなく、相手の出方を見極めてから決める「読み合いで勝つ相撲」に変わってきていることが、今場所を通じて目立つ特徴だ。周囲からは、以前は立ち合いで受けてしまう場面が目についたが、ここ数場所でその弱点を意識的に修正してきたという見方も出ている。

本人が語った「先場所より良くなっているのは自分でもわかる」という手応えも、この変化を裏付けたものと取れるのだ。

綱とり消滅の霧島と対照的な独走

9日目、綱とりを懸けて相撲を取っていた大関霧島は小結大栄翔に敗れて4敗目を喫し、場所後の横綱昇進の可能性は事実上消えた。

大関陣から2敗力士がいなくなったことで、大の里を追うのは大関昇進を懸ける関脇熱海富士、初優勝を狙う新関脇藤ノ川、平幕の美ノ海と金峰山ら。9勝1敗となった今、追走陣との星の差は少なくとも2つに開いている計算だ。

大関経験者不在のまま関脇・平幕勢が名を連ねる展開は近年でも珍しく、それだけ大の里が抜け出た存在になっていることの裏返しでもある。「綱とりの一番手だった霧島が足踏みし、大の里だけが独りで走り続けている」という対比構造こそ、今場所の勢力図を最も分かりやすく示すポイントだろう。

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