「1日10億円」の特殊詐欺被害 警察庁が仕掛ける「スマホ遠隔解析」の攻防戦

シグナル・テレグラムの「壁」

闇バイトのリクルートや、案件屋や指示役、実行犯などとのやり取り等の解明については、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(通信傍受法)に基づき、通信経路上の通信を捕捉することはできるが、トクリュウは秘匿性の高い通信アプリの「シグナル」や「テレグラム」を使っており、メッセージの内容を捕捉しようとしても、暗号化されたデータしか入手できていないのが実情だ。

実行犯を逮捕してグループを解明しようとしたとしても、実行犯は闇バイトに応募して犯行に加担していることがほとんどで、指示役が誰なのかを把握していない上、シグナルやテレグラムのメッセージは自動消去機能で消去されてしまっている。突き上げ捜査が進まない中、トクリュウは別の実行犯を使って犯行を繰り返しているのだ。

「シグナルやテレグラムのメッセージをどのように取得し解析するかが課題となる中、浮上したのがトクリュウのスマホから遠隔でメッセージを入手し解析する手法です」(捜査関係者)

警察庁、9月に提言骨子を公表

スマホに遠隔でアクセスし解析することは技術的には可能だが、憲法が保障する通信の秘密やプライバシーの保護との兼ね合いをどうするかのハードルがあるため、警察庁は「匿名・流動型犯罪グループによる犯罪被害対策のための技術的措置に係る有識者検討会」を設置。遠隔解析捜査の導入について議論を進め、9月に提言骨子を公表した。

検討会は提言骨子で、「現行制度に基づく対策では、犯罪による被害が切迫する者を特定するための情報をはじめとする被害防止に必要な情報を迅速かつ十分に取得することは困難である」とし、「新たな技術的措置として、犯罪者グループの端末から犯罪に悪用される通信アプリの通信内容等を迅速に把握し、被害防止に活用する手法(遠隔解析)を早急に導入することが必要である」とした。