【國澤一誠のゾッとする実話怪談】第九夜 喜ぶパシリ――笑顔で狂気に従う男



数年後にあの男が事件で捕まった・・・

■ ニュースに映った、懐かしい名前

それから5、6年が経ち、学生時代の記憶も薄れていた頃。
夕方のニュース番組を見ていた私は、思わず息を呑みました。

「空き巣に入り、鉢合わせた住人に暴力を振るって逮捕」

画面に映し出された容疑者の名前は、あのじゅんたでした。
同級生のグループLINEは蜂の巣をつついたような騒ぎになり、「あいつならいつかやりそうだと思った」と誰もが納得していました。

しかし、私はどうしても引っかかっていたのです。
主体性のなかったじゅんたが、単独でそんな凶悪な強盗に及ぶだろうか――。

虫の知らせのようなものを感じ、彼のSNSアカウントを探し出して覗いてみました。
逮捕される数日前の投稿写真。そこに写っていたのは、笑顔のじゅんたと、あの田中でした。

「じゅんた、あの家に入ってお金持ってきて」

頭の中で、昔のあの声が再生されました。
おそらく中学時代の小学生暴行事件も、田中の「悪ふざけの指示」だったのでしょう。
じゅんたは拒否することもなく、「はい!」と笑顔で指示に従っただけだったのです。

■ 本当に恐ろしい存在なのは・・・

その予感は、数か月後に確信へと変わりました。
「闇バイト指示役のグループ逮捕」というニュースで、田中の本名が報道されたのです。

田中は、じゅんたの「善悪の区別なく、嬉しそうに従う」という異常な性質を知り尽くし、大人になっても使い捨ての駒として操り続けていたのでしょう。

闇バイトの指示役だった田中が凶悪なのは言うまでもありません。
ですが、私が本当に恐ろしいと感じるのは、じゅんたの方なのです。

彼はきっと、空き巣に入った時も、住人を殴った時も、何の悪気も罪悪感も持っていなかったはずです。
幼い頃と同じように「頼まれたから」という理由だけで、あの笑顔のまま「はい!」と応じたのではないでしょうか。

善悪のタガが外れ、誰かの命令にただ従うだけの存在になってしまった人間。
もし服役を終えた彼が社会に戻り、また別の誰かに「あそこからお金を取ってきて」と囁かれたら――。

彼はきっと次も、迷うことなく「はい!」と答えてしまうのだと思います。

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國澤一誠(くにさわいっせい)

<YouTube>https://www.youtube.com/@kunisawa_issei

長年の怪談語りと取材活動を通して集めた膨大な怪談ファイルを持つ怪談家。実体験や現地取材に基づいたリアルな描写に定評があり、YouTubeやトークイベントなど多方面で活躍中。