「師匠には独特の清潔感があった」立川談志が柳家小さんに惚れ込み、やがて袂を分かった理由【怪人/快人伝 第5回】

弟子を驚かせた独特すぎる倹約術

一方、1階には旅先の土産物なども入る大きな冷蔵庫が3台も並んでおり、その前に談志がすわる執務机があった。

帰り際、弟子のひとりにソッと聞いてみた。

「談志さんはケチで、冷蔵庫のなかの賞味期限のとうに切れた土産物などは、弟子に払い下げるというウワサがあるが本当ですか」

すると、その弟子いわく、「いや…本当です。ただし、生ものは神経を使っているようで、賞味期限が切れて1週間以内くらいには『おい、持ってけッ』となるケースが多い。弟子のなかには『家に送ってやれ』と消費期限切れ1カ月余のアジの干物を頂いたが、やむなく師匠には『送りました』と言っていたものの、じつは捨てていたなんてこともありました」

旧態依然とした落語界の改革を含め、こうした談志特有の“合理主義”は、生き様そのものでもあったのである。
(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」9月3日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。