勝つだけに留まらず、泣いて、笑って、みんなを支えた――吉田沙保里が魅せた「霊長類最強」の男前伝説【スポーツ界"男気列伝"】

2008年北京夏季オリンピックでは金メダルを獲得!

損得抜きに夢を追い、いざという時には身銭を切って弱者を救う――スポーツ界には、そんな男気を体現する者たちがいる。シリーズ「スポーツ界"男気列伝"」。今回は、「霊長類最強女子」と呼ばれながらも、勝っても負けても涙を見せ、後輩たちを支え続けた女子レスリングの絶対王者、吉田沙保里を振り返る。

「最強」の肩書の裏にあった、人一倍熱い涙

「霊長類最強女子」。吉田沙保里ほど、この異名が似合うアスリートはいない。オリンピック3連覇。世界大会16連覇。個人戦206連勝――まさに前人未到の記録を打ち立て、日本女子レスリングの象徴となった。

だが、本当の吉田沙保里は、勝っても泣き、負けても泣く、人一倍情に厚い人物だった。彼女を知るレスリング関係者がよく口にするのは、「面倒見がいい」「誰にでも分け隔てなく接する」という言葉である。

豪快な武勇伝ではない。人を支え、人を励まし、人のために泣ける。それが吉田沙保里というアスリートの"男気"だった。

父が教えた「強さは人を守るためにある」

「吉田の原点は、父・栄勝さんが開いたレスリング道場だった。幼いころから厳しい練習を積み重ね、泣きながらマットに立ち続けた。だが、父が娘に教えたのは『勝て』ということだけではなかったのです」(専門誌編集者)

「強い人ほど優しくあれ」

その父の教えが吉田の人格を形づくった。日本中が彼女を"最強"と呼ぶようになっても、その姿勢は変わらなかった。

大会ではライバルと激しくぶつかる一方、試合が終われば相手を笑顔で称え、若い選手に惜しみなく声を掛ける。勝者であるのに驕らない。それもまた、吉田が示した本物の強さだった。

後輩たちの"頼れる姉御"

そのためか、吉田は日本代表でも自然と中心的存在になっていく。練習では厳しい。しかし、それ以上によく笑い、よく励ました。

試合前に緊張する若手選手には自ら話しかけ、空気を和ませる。代表合宿では年齢や実績に関係なく食事に誘い、悩みの相談にも乗った。

後輩選手たちが口をそろえて語るのは、「沙保里さんがいたから頑張れた」という言葉である。

誰かの背中を押せる人間。それこそが彼女が示した真のリーダーシップだった。

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