江本孟紀の結婚スクープを報知に抜かれた夜…野村解任や「3悪人」の裏で動いた盟友の絆【記者失格第2回】

AIで生成したイメージ
近すぎる、知りすぎるゆえにスクープを取りこぼしてしまう。中立・公正が基本の記者といえども人間だ。数々の特ダネをものにしてきた元スポニチ敏腕記者の吉見健明氏があえて封印し、他紙に出し抜かれた結婚スクープ。「記者失格」第2回は江本孟紀だ!

野村監督の粛清トレードと富田勝の怒り

私が大阪スポニチに入社して最初に担当した南海ホークスは、強烈な個性を持った選手がひしめいていた。何しろチームを率いる監督の野村克也からして、担当の挨拶に行った新人記者の私に向かって「あぁ、野村嫌いのスポニチか」と、いきなり嫌味をカマすような人である。

「これは取材に相当苦労するぞ」と、覚悟したことを鮮明に覚えている。最初に書いたスクープは「野村監督が鶴岡一人元監督の影響力を一掃しはじめた」というもの。鶴岡氏は第1次、2次の計23年間にわたって南海の監督を務めていたいわば"大親分"で、その後を1年挟んで監督(選手兼任)を継ぎ野村も鶴岡氏に育てられてスターになった1人だ。

ただ、この頃の2人の関係は最悪だった。鶴岡氏はチームを離れてはいたが、影響力はまだ根強く残っており、後任の野村はそんな鶴岡氏の息のかかった選手たちを冷遇し、トレードに出そうと画策。チーム内では鶴岡派と野村派の対立が露骨に表面化していた。

そんな中で私がスクープしたのが「巨人・山内新一・松原明夫と南海・富田勝の2対1のトレード」だ。これは野村が仕掛けた「粛清トレード」の1つで、ネタ元になったのは当事者でもある富田だ。

トミは鶴岡氏と同じ法政大学出身ということでバリバリの鶴岡派と目されており、野村から何かと冷遇されて関係も険悪なものになっていた。トレードを通達されたトミは怒り狂ったが、最後には「巨人で活躍して見返してやる!」と決意し、私にこのスクープを書かせてくれたのだ。私とトミは法政大野球部の同期で、試合が終わると毎晩のように飲み歩く仲だった。

ちなみにその後、トミのトレード相手だった山内と松原の結婚スクープを抜いたのも私だ。

これは記者としての真っ当な成果で、移籍してきた2人を取材するうちに親しくなり、山内は「今度、結婚することになりました」と真っ先に報告してくれた。松原などは「吉見さんに抜いてほしい」とわざわざ言ってくれたほどである。

もっとも、私は最も親しかったはずのトミの結婚をスクープすることはできなかった。トミが『遠くはなれて子守唄』で大ヒットした歌手の白川奈美と交際しており、2人で東京・新宿に店を開いていたことまで知っていたのに、だ。

これには理由がある。実はトミが当時世話になっていた大物スポンサーが結婚に大反対しており、トミもその人物の言うことは聞くはずで、交率はしても結婚まではないだろうと考えていたからだ。

事情を知りすぎあていたことが仇となり、判断を間違えてスクープを逃してしまったのだ。ともかく、唯一ともいえる情報源だったトミが南海を去り、チーム内の人脈を失った私は途方に暮れた。

 「南海の3悪人」江本が繋いだ野村解任の端緒

それでもラッキーだったのは、この前年に東映フライヤーズから江本孟紀(78)がトレードで移籍していたことだ。江本は後に野村から江夏豊、門田博光と並ぶ「南海の3悪人」と呼ばれるほどの問題児だったが、実は私とは法政大学野球部で同じ釜の飯を食った1年後輩になる。

南海移籍後、私の顔を見つけると嬉しそうにすぐ近寄って来て信頼関係を築いた。後に私の結婚式の世話まで至れり尽くせりしてくれた。世間を震撼させる大騒動となった大スクープ「南海・野村監督解任」につながった最初のきっかけも貰っている。

当時、野村に疎まれた江本はすでに阪神にトレードされていたが、南海の選手たちから酷い内情を聞かされていたのだ。

「あのオッサン(野村監督)、もういよいよ救いようがなくなってますわ」

野村の愛人だった"サッチー"こと沙知代氏(後に結婚)が、公私混同で球団内部に干渉しているという話で、私はこれを端緒に南海の選手や球団幹部、果てはオーナーへの取材で裏取りを続け、スクープをモノにすることができたのだ。

そんな関係だったこともあり、当然ながら江本の女性関係も知りすぎるほど知っていた。江本は大阪・北新地のクラブの美人ママや東京・赤坂のクラブのピアニストなど、少なくとも3人の女性と交際しており、その現場に私もよく同席していた。

例えば、北新地の美人ママをめぐっては、同じ阪神の選手と江本が取り合いになったことがある。私はその選手とも親しかったので、困ったママさんが私に相談して来たこともあり、彼女のマンションでカレーをご馳走になったことを覚えている。

美人ピアニスト嬢は時折、地方遠征にもこっそり同行しており、移動の飛行機内では2人がメモ用紙でかわす秘密の"会話"を届けるメッセンジャー役をやったりもした。同乗していた監督の野村やコーチ陣に見つかったらマズいと冷や汗ものだった。

【関連】池山ヤクルト好調の裏で再燃する身売り説…フジHD激震と衣笠氏亡きあとの蜜月終焉