致死率最大50%、特効薬もワクチンも存在しない「ハンタウイルス」…日本人も乗るクルーズ船で死者3人、船内では今何が起きているのか

特効薬もワクチンもない──致死率は最大50%

ハンタウイルスはネズミなどの齧歯類が保有するウイルスで、噛まれたり、排せつ物に触れたりすることで感染する。

厚生労働省によると、今回検出が疑われている北米・南米型(ハンタウイルス肺症候群=HPS)の潜伏期間は1週間から5週間程度(通常約2週間)で、重症化すると肺炎や呼吸困難を引き起こす。

致死率はHPSの重症例で最大50%に達するとされ(厚労省は約40〜50%と明記)、確立されたワクチンも特効薬も存在せず、対症療法が唯一の手段だ。

そのためか、感染が報じられた船はカボベルデ(アフリカ西部沖の島国)への入港を当局に拒否され、沖合に数日間停泊を余儀なくされた。

感染が疑われる3人は6日に下船してオランダへ航空搬送。残る乗員・乗客約150人を乗せた船はスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島へ向けて航行を再開したが、他の乗客と距離を保つよう指示されており、SNSでは「家に帰りたい」と涙交じりに訴える乗客の動画が拡散されている。

日本人への感染リスクは? 専門家・厚労省の見解

ちなみに、国立健康危機管理研究機構(JIHS)と厚労省は「国内での感染拡大の可能性は低い」と公式見解を示している。

アンデス型ウイルスの自然宿主である齧歯類は日本国内には生息しておらず、仮にウイルスが持ち込まれても感染サイクルが成立しないためだ。

また、ヒトからヒトへの感染は「濃厚な飛沫・直接接触」が前提であり、適切な隔離措置が取られれば封じ込めは可能とされる。

米研究機関に勤める疫病の専門家がハンタウイルスの弱点を指摘する。

「パンデミックの可能性を左右するのは致死率ではなく、感染の仕組みです。逆説的だが、ハンタウイルスは致死率が高すぎるがゆえに宿主を素早く倒し、感染を広げる時間的余裕を自ら失ってしまう側面がある。専門家らが『次のパンデミックにはなりにくい』と判断する理由はここにあると言えます」

とはいえ、乗船中の日本人1名の安否については2026年5月7日時点で外務省から確定情報は出ていない。引き続き続報に注目が必要だ。

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