【國澤一誠のゾッとする実話怪談】第1夜 「覗くな」事故多発カーブミラーに映ったもう一つの世界

異変! 交差点から消えた「古い喫茶店」

どれだけ記憶を辿っても、納得のいく答えは出ません。仕事を終えたA氏は、その違和感が気になって仕方がなくなり、再びあの交差点へと車を走らせました。

事故を起こしかけた交差点に戻り、A氏は再びカーブミラーを確認します。角には、先ほどと同じくお米屋さんがありました。しかし、その隣に映っていたのは、エプロン姿の女性が植木に水をやっている「美容室」でした。

(あれ? おかしい……)

事故直前にミラーで見た景色は、角に「お米屋さん」、その横に「古い喫茶店」で、40代くらいの女性スタッフが掃き掃除をしていました。しかし、今、目の前にあるのは、新しく店を構えたように綺麗な「お米屋さん」と、その隣で20代くらいの女性が水やりをしている「美容室」なのです。

車を停めて確認に向かうと、やはり先ほどミラーで見た光景とは全く異なっていました。気になったA氏は、美容室の女性スタッフに声をかけます。

「すみません、この場所って、以前は喫茶店じゃなかったですか?」

女性スタッフは不思議そうな顔で答えました。

「喫茶店ですか? すみません、私は知らないですね。この美容室になる前は、整体か何かだったと思いますよ」

この不思議すぎる体験を後日、友人に話したところ、友人は驚くべき言葉を口にしました。「あぁー、それって○○町のカーブミラーでしょ? あのカーブミラーは信じない方がいいよ! たまに別の世界が映るって言われてるんだよ」

A氏が見た「古い喫茶店の光景」は、過去の、あるいはパラレルワールド(異世界)の景色だったのでしょうか。そして、ミラーに映らないはずの高校生が突然現れたのは、その「異世界」と現実がわずかに交差した、戦慄の瞬間だったのかもしれません。

日常の風景に潜む「異界への入口」。その先に、次回はどのようなゾッとする実話が待っているのでしょうか・・・。

【著者プロフィール】

國澤一誠(くにさわいっせい):長年の怪談語りと取材活動を通して集めた膨大な怪談ファイルを持つ怪談家。実体験や現地取材に基づいたリアルな描写に定評があり、YouTubeやトークイベントなど多方面で活躍中。