【國澤一誠のゾッとする実話怪談】第1夜 「覗くな」事故多発カーブミラーに映ったもう一つの世界

カーブミラーに映る「ありえない光景」

カーブミラーには映らなかったが…

外回りの営業職であるA氏は、約束の時間まで1時間ほどの余裕があったため、焦ることなくゆっくりと運転していました。

「そろそろこの辺りだな。駐車場を探して停めるか」

そう考えながら、件の交差点に差し掛かりました。

A氏は一時停止線で車を止め、設置されたカーブミラーで左右の安全を確認します。ミラーには、誰も映っていません。ゆっくりとハンドルを右に切り、曲がろうとした、その瞬間――。

「危ない!」ガチャン!!

突然の出来事に驚き、車を急停車させました。ぶつかる寸前で、一台の自転車に乗った男子高校生が転倒したのです。

慌てて車を降り、「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」と駆け寄ります。幸い、車との接触はギリギリで避けられ、高校生に怪我はありませんでした。A氏は心から安堵し、名刺を渡し、その場を後にしました。

車に戻ったA氏の心臓は、まだバクバクと激しく脈打っていました。その戦慄の瞬間を何度も頭の中で反芻するうち、A氏はある「違和感」に囚われます。

「確かに、あのカーブミラーには、誰も映っていなかったはずだ……」

ミラーに映っていたのは、交差点の角にあるお米屋さんと、その隣に佇む古い喫茶店。そして、喫茶店の前をエプロン姿のスタッフが掃き掃除をしている光景だけでした。

自転車はもちろん、通行人もいなかった。それなのに、なぜ、あの男子高校生は突然現れたのか?