連れ去りから48年! 横田めぐみさんだけではない北朝鮮が闇に葬った日本人女性の“拉致リスト”

北朝鮮側が提供した横田めぐみさんとみられる女性の写真

【女性たちの北朝鮮拉致事件・前編】
ジャーナリストの岡本萬尋氏が、事件の謎に迫る「シリーズ戦後未解決事件史」。第5弾は、高市政権の樹立で再び脚光を浴び始めた「北朝鮮拉致事件」だ。2022年に5人の拉致被害者が帰国して以来、およそ四半世紀――進展のない事件の闇に、今再び岡本氏がメスを入れる。(全3回中の1回)

自宅から数百メートルの場所で連れ去られ…

北陸有数の繁華街、新潟市の古町から西へ約1キロ、日本海に程近い市立寄居中学校。その日の午後6時半ごろ、部活動のバドミントンの練習を終えた1年生の少女は2人の友達と校門を出た。

周囲は静かな住宅街、海へと伸びる緩やかな坂道を上っていく。友達の1人とはすぐに別れ、もう1人も次の交差点を曲がり家路に着いた。

1人になった少女が坂道を直っすぐ進むと、角に白い壁の家のあるT字路へ至る。夕闇が迫る中、そこを左折し細い路地に入れば、あと100メートルほどで母親が夕食に少女の好物のシチューを作って待つ自宅の玄関を開けられるはずだった。

その辺りの、どこか――。少女は何者かに連れ去られ、北朝鮮の工作船に乗せられた。午後7時ごろ、日本海で船舶用ディーゼルエンジンのものとみられる爆音を複数の近隣住民が聞いている。

真っ暗な船倉で約40時間、泣き叫び壁を掻きむしり続けた少女の両手の爪は剥がれ血まみれだったという。

「静かにしなさい」。蓮池薫さんら、他の拉致被害者も拘束直後に言われたという丁寧すぎる脅迫の言葉を、13歳の少女も聞いたのだろうか。

その少女、横田めぐみさんが1977年11月15日に拉致されて今月で48年。彼女は今年61歳、拉致被害者の親世代唯一の存命者となった母・早紀江さん(89)は「精も根も尽き果てた。『もう会えないのかな、それはそれで仕方ないな』と思うこともある」(今月11日の会見)。もう本当に時間がない。

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