ゴジラ松井が長嶋茂雄さんの遺言「巨人監督」をためらう障害

「松井のメジャー挑戦を後押ししたのは長嶋だけ」

松井がメジャー挑戦を表明した2002年、強く残留を要請したのが監督だった原だ。

正当なFAでありながら松井が自らの決断を「裏切り者」として悩んだのも、原や渡邉氏など球団側からのプレッシャーがあったからに他ならない。当時の巨人内部で松井のメジャー挑戦を後押ししたのは長嶋だけである。

これによって松井は巨人と完全決別し、以降、巨人監督の可能性は絶望的となった。

一方の原も残留要請を拒否されたことを根に持っており、松井監督待望論が盛り上がるたびに「巨人に帰って来たくないのなら、もういい加減、松井にこだわることはないでしょう」と渡邉氏や山口オーナーに進言していたという。

この件を含め、巨人監督人事で暗躍する原の言動は松井の耳にも入っている。

「原政権下でヘッドコーチだった鹿取義隆や投手コーチの尾花高夫など自分の立場を脅かす優秀な人材を次々と追いやったり、実現しかけた星野巨人に反対したりもした。巨人愛を標榜しながら、実際は自分本位でチームを支配してきた原の裏表のある性格は松井もよく知っていますよ」

松井の側近であるX氏は筆者にこう明かしている。

「松井は人が良いから、阿部には契約期間の残り1年、監督をやらせたいという気持ちがある。だから気を遣って自分から積極的には動いていません。ただ、それ以上に原の存在が煙たいと感じているようです」(同)

松井の謙虚で人を絶対に悪く言わない性格は多くの人が知る通りだ。

長嶋の遺言にも等しい「約束」を実現したい気持ちも強いはず。

そのためには、原辰徳という障壁を乗り越える必要があるようだ。

【一部敬称略】

「週刊実話」12月4・11日号より

吉見健明

1946年生まれ。スポーツニッポン新聞社大阪本社報道部(プロ野球担当&副部長)を経てフリーに。法政一高で田淵幸一と正捕手を争い、法大野球部では田淵、山本浩二らと苦楽を共にした。スポニチ時代は“南海・野村監督解任”などスクープを連発した名物記者。『参謀』(森繁和著、講談社)プロデュース。著書多数。