幻のラーメン屋『居酒屋×ラーメン 真珠』店主インタビュー(後編)「いろんな食材を使っていろんなラーメンを作って、そのたびに発見がある」

定年後はのんびりとしたラーメンライフを送りたい

「ブランク明けで作るラーメンには不安があったし、それは今でも消えません。でも、それでいいんです。正解を見つけたら終わってしまう。正解を探すから楽しいんです。毎月違った味のラーメンを出すのも、正解を見つけるため。
いろんな食材を使っていろんなラーメンを作って、そのたびに発見がある。でも、いつも不安なんですよね。これで本当に“正解なのか”って。だから、ラーメン屋の壁とかにこだわりとかポエムがあるじゃないですか、ああいうのは書けないんですよ、ずっと不安だから」『ラーメン真珠』は最初こそ知り合いが客の大半を占めたが、谷川がラーメン作りの勘を取り戻していくと、地元客の割合が増え、いつしか話題が話題を呼び、行列ができるまでになっていった。

気になるのはこの先の展開だ。自宅ラーメンひと筋25年の谷川が、死ぬまでに常設の店を持とうという野望はあるのだろうか。

「僕は一つのラーメンを極めたいとも思わないし、今のところ店を出す気もない。一つのことばかりやり続けるのは飽きちゃうんですよね。それに常設店を出すとしたら原価計算なんかもしっかりやらないと潰れます。
僕は誰にも、材料費にも縛られないで、好きにいろんなラーメンを作れる方がありがたい。だけど、ぼんやりとなんだけど、いつかやれたらいいなとも考えますよ。毎日はムリ。イメージは、東京の近くの登山客がいっぱいくるような山。高尾山の麓とかがいいかな。
そういう場所で週の2~3日。登山客は夕方過ぎたらいないから、朝から夕方の営業ぐらいでね。定年後とかにそういうのんびりしたラーメンライフを送れたらいいなとは思いますよ」

谷川は楽しそうにラーメンを作る。本当に納得ができる自分のラーメンができたとき、その店の壁にはどんな言葉を書くのだろうか。

「そうですね。それでも僕は自信満々には言えるとは思えないので、『口コミは書かないでください』とかですかね(笑)」

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」12月4・11日号より

『居酒屋×ラーメン 真珠』東京都渋谷区笹塚3-5-6

次回の開店は11月29日(土)は黒豚味噌ラーメン、12月28日(日)は和牛テールラーメンの予定