幻のラーメン屋『居酒屋×ラーメン 真珠』店主インタビュー(後編)「いろんな食材を使っていろんなラーメンを作って、そのたびに発見がある」

『居酒屋×ラーメン 真珠』店主の谷川進 (C)週刊実話Web
村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前までにやっておくべきこと」、今回は“幻のラーメン店”店主・谷川進氏のインタビュー(後編)をお届けする。ラーメンが特別好きではないという店主は、月一開店のお店をどのように人気店にしていったのか――。

作り続けていないとラーメンの味は落ちる

30歳を越えて、月に一度のラーメン屋稼業も様になってきた頃、谷川進の人生が動き始めた。

2013年に、長女が誕生したこともその一つだ。待望の娘を授かったことで、これまでのような活動時間が取れなくなってきたため、渋谷の一等地で月に一度出していた間借りラーメンの『サンチェ』の活動休止を決心。

そこから約4年もの間、谷川はラーメンを忘れ育児に没頭し、父として幸せを享受する。

「子供が2人生まれたことで物理的に忙しくなったこともそうだし、気持ちとしても半分引退に傾きかけていたんですよ。最初2年休んだあとの’15年ごろに大久保のジンギスカン屋を間借りして1年ぐらい『サンチェ』を再開したこともあったんですけどね。
翌年に2人目が生まれてからはしばらく離れました。ただ、仕事の関係でラーメン屋さんに話を聞いたり、キッチンスタジオを使う機会があって、あ、これはまた店出せるかもなんて思いが湧き上がってきたこともありました」

’20年。子供たちも保育園や学校に進み時間が取れるようになったこと、いい条件の話もあったことで、再び『サンチェ』を復活させようと動き出した矢先、世界を新型コロナのパンデミックが襲う。

飲食業界は大打撃を受け『サンチェ』復活も流れてしまった。

世の中はステイホーム、谷川は家で久しぶりにラーメンを作り家族にふるまう。娘たちは「美味しい、美味しい」と喜んで食べてくれる。

だが、そのラーメンをひとくち食べて谷川は愕然とした。美味しくないのだ。ラーメンもアスリートと同じ。作り続けていないと味は落ちる。谷川は焦りを覚えた。

そんなときに、さらに禍は起こる。【死ぬ前にやっておくべきこと】アーカイブ