幻のラーメン屋『居酒屋×ラーメン 真珠』店主インタビュー(後編)「いろんな食材を使っていろんなラーメンを作って、そのたびに発見がある」

「ラーメン屋はこんな名前付けないだろう」

レンタルキッチンで月に1度、間借り営業している『真珠』
「コロナ禍になってすぐ、社内の異動をめぐってトラブルになり、閑職に追いやられてしまったんです。給料も大幅に減りましたし、正直、参りましたよ。一瞬、ラーメン屋に転職しようかなという考えも頭をよぎりましたよね。
だけど、まだコロナが明けていなかったから飲食業界は現実的ではなかった。それが逆に良かったのかもしれない。コロナじゃなかったら、ラーメン屋になっていたような気もしています」

それから2年、谷川は必死で就職活動を行った。条件の良い同業他社に再就職が決まった。

コロナも終息を迎え、本業も落ち着いたことで、頭をよぎったものは「もう一度、ラーメンとしっかり向き合ってみよう」という思いだった。

谷川のスープに再び火が灯った。休日に、深夜に、ラーメンの試作を重ねつつ、場所を貸してくれる店を探した。

’24年3月。地元・笹塚のクラフトビール屋『OUR DAYs』が、離れのスペースをレンタルキッチンにしているのを見つけると、迷いはなかった。

谷川にとって4軒目の間借りラーメン店にして、クラフトビールとラーメンの店『居酒屋×ラーメン真珠』がオープンする。

谷川にとって新たな出直しの一歩となるこの店は、慣れ親しんだ『サンチェ』の名を捨てて「ラーメン屋はこんな名前付けないだろう」という理由で『真珠』に決まった。谷川は店名に意味を持たせない。

月に一度、ラーメンに加えてオリジナルのクラフトビールと餃子、チャーシューなどのつまみを出す。

こだわりの食材を惜し気もなく投入し、原価率は5割近くになることもある。本当に美味いラーメンを探求する生活が始まったのだ。